2026年FIFAワールドカップ、北米開催における観光業への影響と課題

FIFAワールドカップ北米開催、観光需要に暗雲
北米W杯、期待外れの観光客数と経済効果
2026年にアメリカ、カナダ、メキシコの3カ国で共同開催されるFIFAワールドカップは、開催決定当初から大きな経済効果、特に観光収入の増加が期待されていました。しかし、現状は当初の予測を下回る状況で推移しています。過去の大会が開催国にもたらしてきた経済的恩恵と比較すると、今回の北米大会では、トランプ政権時代からの外国人観光客の減少傾向が影響し、期待されたほどの集客には至っていません。ホテル業界は客室料金の値下げを余儀なくされ、航空券の価格高騰も旅行者の減少に拍車をかけています。さらに、観戦チケットの高額化も影響し、業界アナリストからは「盛り上がりに欠ける」との指摘が出ています。ニューヨーク市ホテル協会のCEOは、ワールドカップ関連のホテル客室収入の予測を大幅に下方修正するなど、失望感を露わにしています。3カ国16都市という広範な開催地、それに伴う移動の煩雑さ、ビザ取得の難易度、そして観戦費用の高額さが、ファン層の旅行意欲を削いでいる主な原因と考えられています。
直前予約の伸び悩みとホテル業界の現状
航空データ分析会社Ciriumの報告によると、2026年6月と7月の欧州から開催都市への航空券予約は、昨年から既に減少傾向にあったにも関わらず、さらに平均3.8%減少しています。FIFAはニューヨークに120万人のファンが集まると予想していましたが、ニューヨーク市ホテル協会は現実的な数字として50万人程度を見込んでいます。ホテル側は、グループステージ終了後には需要が回復することを期待していますが、現時点では料金の値下げが散見されます。例えば、ニューヨーク最大のホテルであるニューヨーク・ヒルトン・ミッドタウンは、昨年12月の料金から半額の1泊415ドル(約6万6000円)に値下げして対応しています。
高額チケットとビザ問題が旅行者の足かせに
今回のワールドカップでは、出場国の半数以上からアメリカへの入国にビザが必要となります。これは、国境警備の強化に既に懸念を抱いている旅行者にとって、費用面だけでなく精神的な負担も大きくしています。過去には、トランプ政権がソマリアのサッカー関係者を入国拒否した事例もあり、ビザ取得の厳格さが浮き彫りになっています。FIFAのチケット販売方法も批判の対象となっており、主催者が過去最高額の基本価格を設定し、大会接近に伴う変動価格制を初めて導入した結果、チケット価格は高騰しています。転売価格に上限が設けられなかったことも、価格の高騰を招き、規制当局の監視下に置かれる事態となりました。TicketDataによると、ニューヨークやマイアミなど主要開催都市での最安値チケットは1000ドル(約16万円)近くに達しており、海外からのファンは短期間での旅行手配やビザ取得の費用と複雑さから、直前需要が低迷する可能性があります。
バケーションレンタル市場の活況と新たな宿泊動向
一方で、グループでの宿泊が可能なバケーションレンタルは、数少ない明るい兆しを見せています。短期宿泊レンタル(STR)の分析を行うAirDNA社のデータによると、ボストンやロサンゼルスなどの開催都市では、特に格安・エコノミータイプのレンタルの予約が急増していることが示されています。開催都市全体のレンタルの平均宿泊料金は1泊あたり218ドル(約3万5000円)でしたが、6月8日時点では、ホストが直前需要を見込んで料金を上げたため、335ドル(約5万4000円)程度まで上昇しています。これは、高騰するホテル料金や航空券、ビザ取得の煩雑さを避ける旅行者が、より手頃で柔軟な宿泊オプションを求めていることを示唆しています。