関東鉄道竜ヶ崎線は、茨城県を走るローカル線でありながら、その存続が危ぶまれる深刻な状況に直面しています。都心への通勤圏内である龍ケ崎市に位置するにもかかわらず、長年にわたる利用客の減少と年間約5000万円という慢性的な赤字が、この歴史ある路線の未来を不透明にしています。駅周辺の利便性低下、学生利用の低迷、そして老朽化した車両の更新問題など、複合的な要因が絡み合い、経営環境は一層厳しさを増しています。未来へ向かうか、歴史に幕を閉じるか。竜ヶ崎線の岐路
混雑率最下位レベル:日暮里・舎人ライナーとの対比
朝の通勤時間帯の混雑を示す指標である混雑率において、日暮里・舎人ライナーが5年連続で177%という圧倒的な混雑で全国ワースト1位を記録する一方で、茨城県の関東鉄道竜ヶ崎線はわずか53%という東日本でワースト2位の閑散ぶりを示しています。この竜ヶ崎線は、JR常磐線龍ケ崎市駅と接続する佐貫駅から竜ヶ崎駅までわずか3駅、7分で結ぶ超短距離路線です。
開業126年目の試練:竜ヶ崎線に迫る廃止の危機
人口7.3万人を擁する龍ケ崎市を走る竜ヶ崎線は、1時間に2~3本の運行本数を維持しているにもかかわらず、年間5000万円もの赤字を抱え、開業126年目にして廃止の危機に瀕しています。一般的に赤字額が格段に少ないにもかかわらず存続が危ぶまれる背景には、より深い構造的な問題が潜んでいます。
「あり方検討」に至る経緯:経営環境の悪化
竜ヶ崎線の存続問題が浮上したのは2026年1月、運行会社である関東鉄道が龍ケ崎市に対して今後の路線運営について協議を申し入れたことから始まりました。4月に開催された市の会合では、鉄道の経営状況や存続策が議論され、鉄道としての存続か、あるいはバスなど他の交通手段への転換かという検討が始まったばかりです。
利用客半減と定期外利用の低迷:数字が語る現実
竜ヶ崎線の1日あたりの利用客は約2000人で、年間約74万人に留まっています。これは30年前の1995年と比較すると半減しており、新型コロナウイルス感染症の影響で定期利用客は回復傾向にあるものの、定期外利用客は元の水準に戻っていません。主力車両キハ2000形(定員139名、座席定員40名)は朝の時間帯でも座れることが多く、昼間は乗客がほとんどいない状態です。これは他の首都圏路線、さらには関東鉄道のメイン路線である常総線と比較しても、朝晩の利用状況の寂しさが際立っています。
交通結節点としての機能不全:竜ヶ崎駅の低すぎる利便性
竜ヶ崎線が閑散としている根本的な理由は、終点である竜ヶ崎駅の利便性の低さにあります。駅周辺には商店が少なく、住宅街が広がるのみで、バスの本数も極めて少ない状況です。かつては地域のにぎわいの中心であったこの駅も、現在では閉店した店舗や空き地が目立ちます。一方で、500mほど北の県道沿いにはロードサイド店舗が立ち並び賑わっていますが、鉄道を利用してアクセスする人はほとんどいません。さらに、周辺市町へのバスの拠点としても機能が低く、多くの路線がJR龍ケ崎市駅に直結しているため、竜ヶ崎線が「JRへの接続・培養路線」としての役割も薄れています。
通学利用の伸び悩み:スクールバスとシャトルバスの存在
竜ヶ崎駅から徒歩圏内には2つの高校と流通経済大学のキャンパスがあり、数千人規模の学生が通学しているはずですが、竜ヶ崎線の学生利用は伸び悩んでいます。高校にはスクールバスがあり、大学もJR龍ケ崎市駅から直通のシャトルバスを運行しているため、竜ヶ崎線を利用する学生はごくわずかです。大学の公式サイトでは、アクセス情報に竜ヶ崎線の記載すらありません。さらに、JR常磐線沿線の高校に通う学生は、親による送迎で直接JR龍ケ崎市駅まで行くことが多いため、竜ヶ崎線の通学利用率は25%に留まっています。
短距離路線が招く収益源の限界:広告収入の伸び悩み
駅周辺の衰退、乗り換え需要の低迷、そして通勤・通学利用の不振といった問題に直面する竜ヶ崎線ですが、経営再建は容易ではありません。全長が短く、わずか3駅・7分という路線の特性上、広告効果が薄く、車両ラッピングなどの新たな収益源を見つけることが困難です。同じ関東鉄道の常総線では全面広告車両が見られますが、竜ヶ崎線ではこのような増収策が取れないのが現状です。また、車両の老朽化も深刻で、29~45年経過した3両の車両は修繕費用がかさむだけでなく、1両あたり4~5億円とされる新車への更新も大きな負担となっています。
解決策なき模索:行政と鉄道会社の協力体制の必要性
4月に開催された龍ケ崎市地域公共交通協議会分科会では、竜ヶ崎駅の拠点性の低さや路線の使い勝手の悪さが指摘されました。市内の人口減少、特に竜ヶ崎駅周辺の人口が20年で2割以上減少し、2050年には半減すると予測されており、将来的な集客の見通しは極めて厳しいです。会議では、関東鉄道から「上下分離策」(設備費用を地元が負担し、鉄道会社は運行に専念する)などの提案がありましたが、市からの具体的な対策はまだ提示されていません。議論は「秘境駅としての集客」など、まだ初期段階の模索に留まっています。関東鉄道は2年後の結論提示を求めており、竜ヶ崎市の今後の具体的な支援策が待たれます。