タイ、観光ビザ免除制度の厳格化へ舵を切る

タイ政府は、外国人観光客に対する入国制度の運用において、より厳格な姿勢を示すことになりました。長期滞在制度の悪用といった問題への対応が喫緊の課題となり、観光政策と国家の安全保障のバランスを取りながら、新たな制度設計が求められています。
タイ、外国人観光客ビザ免除制度を厳格化:長期滞在悪用と観光客減少への対応
2026年5月22日、タイ政府は外国人旅行者向けのビザ免除制度を大幅に見直す決定を下しました。この変更は、滞在期間の短縮や対象国の削減を伴い、主に相互主義、国家安全保障上の懸念、そして既存制度の複雑さといった要因に対処することを目的としています。
タイ外務省領事局長のムンコーン・プラトゥームカエウ氏によると、これまで観光客の間で混乱を招いていた60日と30日の複数ビザ免除制度の統一が図られます。具体的には、93カ国を対象としていた60日間のビザ免除措置は廃止されます。一方、30日間のビザ免除措置は引き続き維持されるものの、対象国・地域は従来の57から54へと削減されます。ただし、除外される3カ国については、現時点では詳細が明らかにされていません。
この厳格化の背景には、タイが観光業を主要産業の一つと位置づけ、パンデミック後の経済回復と観光振興のために、2024年に60日間のビザ免除制度を導入した経緯があります。しかし、この長期滞在制度が悪用され、特に一部の観光客による不法行為が問題視されるようになりました。
最新のデータによると、2026年1月1日から5月17日までの期間におけるタイへの外国人旅行者数は1290万人で、前年同期比で3.3%の減少を記録しています。タイ政府は、中東情勢の影響などを考慮し、2026年の外国人旅行者数を前年の約3300万人から約3200万人に減少すると予測しており、今回のビザ制度見直しは、観光客数の減少トレンドの中で、質の高い観光客誘致と国内秩序の維持を両立させるための戦略的な一手と考えられます。
観光大国タイが直面する課題と持続可能な観光への転換
観光立国として世界中から愛されるタイが、ビザ免除制度の厳格化に踏み切ったことは、単なる入国規制強化以上の意味を持つと考えられます。これは、短期的な観光客数増加に偏りがちな観光振興策から、より持続可能で秩序ある観光への転換を模索する、タイ政府の強い意志の表れと言えるでしょう。長期滞在者の不法行為への対策は不可欠であり、今回の措置は国家の安全保障と国内秩序の維持を重視する姿勢を明確に示しています。しかし、対象国の削減が観光収入に与える影響は小さくありません。今後は、厳格化された制度の中で、いかに多様な旅行者を惹きつけ、タイの魅力を世界に発信していくかが、政府の重要な課題となるでしょう。文化体験や自然観光など、量より質を重視する観光戦略への転換が、これからのタイ観光の未来を左右する鍵となるかもしれません。