ドラァグクイーン、ドリアン・ロロブリジーダのコミュニケーション術

Netflixの恋愛リアリティ番組『ボーイフレンド』で注目を集めるドラァグクイーン、ドリアン・ロロブリジーダ。かつては会社員として営業職を経験し、その素顔をメディアで披露することもある彼女の人物像は多くの人々を惹きつけています。この一連のインタビュー記事では、彼女が歩んできた半生と、その裏側にあるパーソナリティに深く切り込んでいます。今回は、ビジネスの世界で培われた能力と、人との関わり方における独自の哲学に焦点を当ててご紹介します。
「舞台に立つことよりも、実は商談の方が緊張したものです」と語る彼女の言葉は、その華やかな外見からは想像しにくい意外な一面を覗かせます。巨大なウィッグ、きらびやかなスパンコールのドレス、そして瞬くたびに揺れるつけまつげという非日常的な装いからはかけ離れた、「商談」という言葉を口にする姿は、一瞬の戸惑いを与えます。しかし、その穏やかな語り口と、自然と引き込まれる話術は、まさに営業職に求められる資質そのものです。ドリアン・ロロブリジーダは、ドラァグクイーンとしての活動と並行して、約13年間会社員として働いていた経験があります。
彼女は、見知らぬ場所でのパフォーマンスやステージに立つ経験と、営業における商談は本質的に似ていると指摘します。どちらの場面でも、相手は「さあ、どんな魅力を見せてくれるのか」と期待の眼差しを向けており、その相手を魅了できるかどうかが重要だと語ります。営業もドラァグクイーンの活動も、表現の形は違えど、根本的には同じ「人を惹きつける」という目標に向かっているのです。大学を中退後、営業職を経て化粧品やアパレルブランドの広報担当となり、2020年に専業ドラァグクイーンとなった現在も、会社員時代の経験が多方面で活きていると彼女は強調します。
広報の仕事では、様々なメディアの編集部を回り、商品の魅力をいかに簡潔かつ印象的に伝えるかを常に考えていたと言います。現在の活動では、その「商品」が自分自身に置き換わっただけであり、行っていることは変わらないと語ります。会社員時代の経験は、決して無駄になっていないという彼女の言葉からは、過去の経験を現在の活動に昇華させる柔軟な思考が見て取れます。目の前の相手に対し、何をどのように伝えるか。相手の関心事を察知し、その「商品」の魅力を届けるという意識は、ドラァグクイーンとなった今も変わらず持ち続けているのです。
ドリアン・ロロブリジーダ、本名大竹正輝、41歳。会社員時代から初対面の人と会うことを楽しんでいました。商談も好きで、「どうも、大竹で〜す!」と毎回明るく挨拶をしていたそうです。もちろん、売り手側である以上、うまくいかないことの方が多かったと正直に語ります。それでも、取引が成立したときの喜びはひとしおで、そのプロセス自体が楽しかったと言います。営業マン時代は、いわゆる「オネエ言葉」を控えめに使っていましたが、広報時代にはそれを全開にし、その独特の話術で多くの取引先にファンを作りました。彼女は「出会う人は皆、自分のファン予備軍だと思っています。この人も、あの人も、私のファンになり得る人だと考えると、わざわざぶっきらぼうに接するよりも、『こんにちは〜!』と自然と感じ良く振る舞いたくなるんです。そうすることで、自分も相手も幸せになれるでしょう?」と語ります。
しかし、世の中にはどうしても自分のファンになってくれない人もいるものです。そういった相手に対しては、どのように対処するのでしょうか。「そういうこともありますね。でも、そういう時は『この人、センスがないわね』と思うだけです(笑)。落ち込むことも、ツンケンすることもないんです!」と彼女は笑顔で答えます。相手の反応まで思い通りにしようとしない、この軽やかな割り切り方は、人との関わりを心から楽しむための、彼女ならではの智慧と言えるでしょう。