ヒットする企画を生み出す秘訣:桝本壮志の「頭の中の三角形」思考法




他者を魅了する企画は「自炊」とは一線を画す
企画の「生産力」を超えた「伝達力」の追求
アイデアを量産できることは素晴らしい才能ですが、それだけでは真のキャリアアップには繋がりません。例えば、一日100個のギャグを生み出す芸人でも、それらが誰にも響かなければ成功は難しいでしょう。他者に理解されないアイデアは「単なる自己満足」と見なされてしまいます。企画の創造方法を習得したら、次に意識すべきは「いかにして相手に伝えるか」という「届け方」なのです。かつて『マネーの虎』や『ゴチになります!』といったヒット企画の生みの親である先輩作家は、桝本氏に「自分のやりたいことだけを詰め込んだ企画は、まるで自炊と同じ。それを他人に食べさせてお金をもらうべきではない」と助言しました。この言葉が、桝本氏に重要な気づきを与えたのです。もし企画作りが自己完結で満足するなら、好きな料理を作って褒められるだけの「自炊」で十分かもしれません。しかし、企画を通してブレイクスルーを目指すのであれば、採用する側を満足させる「味付け」や「レシピ」を工夫する必要があります。桝本氏自身も後者の道を歩み、試行錯誤の末、独自の「採用率を高める企画作りのレシピ」を確立しました。その具体的なレシピを、次のステップで紐解いていきます。
発想の源泉:「頭の中の三角形」フレームワーク
桝本氏が企画を考案する際、常に意識しているのが、頭の中に描く「三角形」のフレームワークです。この三角形は、①トレンド、②ニーズ、③主観の三つの要素から構成されています。例えば、フジテレビに提出し、いきなりゴールデンタイムのレギュラー番組となった『クイズやさしいね』を例に挙げてみましょう。この番組は、従来の知識を問うクイズとは異なり、「優しい人だけが解けるクイズ」というユニークな視点が特徴でした。例えば、「Q.東京タワーは月に一度、下半分だけしかライトアップされなくなります。それはなぜでしょう?」といった問題が出されます。正解は、「都会に住む人にも夜空の美しさを感じてもらうため、満月の日だけライトを半分にする」という優しい配慮からでした。この企画の着想は、まず「トレンド」から始まりました。当時、エンターテインメント業界の動向を見ると、内村光良さんがMCを務める『イッテQ』が高視聴率を連発し、芸人好感度ランキングではサンドウィッチマン、博多華丸・大吉、オードリーといった芸人たちが上位に食い込み始めていました。さらに、又吉直樹さんが芥川賞を受賞したことで、「優しい人の時代が来ている」と桝本氏は感じたのです。この「トレンド=優しい人」という一点を見つけた後、次に「ニーズ」を考察しました。番組企画における「ニーズ」とは、「視聴者が求めていること」を指します。どうすれば多くの人々に視聴してもらえる番組になるかを深く考え、「クイズ形式であれば参加してもらえるだろう」という発想に至り、「優しい」と「クイズ」という二つの要素を結びつけました。ここまでの「トレンド」と「ニーズ」の探求は、社会の動向と大衆の欲求にアンテナを張ることで生まれるものであり、自分がやりたいことだけで作る「自炊」とは大きく異なります。自分ではなく、大衆の「トレンド」と「ニーズ」という二点をしっかりと押さえた後、ようやく「主観」が登場します。ここで、自身のスパイスを加えるのですが、この「主観」には個人のセンスが反映されるため、人によって差があります。しかし、三つの要素のうち二つの線がすでに引かれているため、残りの一点を見つけるための思考の補助線となってくれるのです。
「優しい」と「クイズ」が織りなす「頭の中の三角形」の完成
桝本氏は、「優しい」と「クイズ」という二つの言葉を頭の中で巡らせるうちに、「優しい人だけが解けるクイズ」というフレーズを閃き、ついに「三角形」を完成させました。この思考法が皆さんの企画作りに少しでも役立つことを願っています。さて、また来週、別のテーマでお会いしましょう。