中村壱太郎、伝統と革新を舞う

令和の時代を彩る花形歌舞伎役者たちが、歌舞伎の未来を創造し、舞台で輝きを放ち続けています。彼らの情熱的な思いは、美しい舞台写真と共にこの連載で紹介されています。今回、第25回では、錦秋十月大歌舞伎に出演する中村壱太郎に焦点を当てます。スーパー歌舞伎『もののけ姫』で新たな表現に挑んだ経験と、それを通じて改めて深まった古典への思いについて、歌舞伎に精通した山下シオンが語ります。
革新的な挑戦と古典への回帰
中村壱太郎は、錦秋十月大歌舞伎において、第一部で『鯉つかみ』の小桜姫を演じ、第三部では『屋敷娘』と『近江のお兼』という異なる趣の女方を務めます。特に『鯉つかみ』は20代前半から片岡愛之助と共に育て上げてきた作品であり、各地での上演を経て、ついに歌舞伎座の大舞台にかかります。これは中村壱太郎にとって、長年の努力が実を結ぶ特別な瞬間と言えるでしょう。
壱太郎は、これまでも歌舞伎の枠を超えた挑戦を続けてきました。スーパー歌舞伎『もののけ姫』ではサン役、マルコス浄瑠璃『金閣寺』ではコンテンポラリーダンサーとの共演など、多様な身体表現に挑んできました。これらの経験は、彼に新たな視点をもたらし、歌舞伎座に戻った今、改めて古典の重要性を再認識させるきっかけとなりました。革新への挑戦と古典の継承は、壱太郎の芸術活動の中で一本の道として結びついています。彼の言葉からは、伝統を重んじつつも、常に新しい表現を追求する強い意志が感じられます。
多様な役柄に挑む壱太郎の芸と未来
中村壱太郎は、錦秋十月大歌舞伎で『鯉つかみ』の小桜姫を演じます。この役は、22歳から長年演じ続けてきたもので、片岡愛之助と共に各地で上演を重ね、ついに歌舞伎座での上演が実現しました。壱太郎は、この役を単なるお姫様ではなく、少しほんわかとした世間知らずな雰囲気を出すように工夫してきました。特に関西らしい笑いの要素を取り入れつつ、歌舞伎座という大舞台でどのように観客に伝えるかを意識して、新たな表現を模索しています。
また、第三部では『屋敷娘』と『近江のお兼』という対照的な舞踊を披露します。『屋敷娘』では品格を重視し、後輩の尾上眞秀と共に踊ることで、踊りの基礎の大切さを伝えます。『近江のお兼』は、中村勘三郎や中村勘九郎への憧れから実現した念願の演目であり、女方として派手な踊りを追求し、観客に華やかな感動を届けたいと語っています。これらの役柄を通じて、壱太郎は古典の継承と自身の成長を深く結びつけ、歌舞伎の未来を担う一員としての責任感を強く感じています。さらに、『もののけ姫』でのサン役や『金閣寺』でのコンテンポラリーダンスとの共演など、ジャンルを超えた挑戦が、彼自身の表現の引き出しを広げ、それが古典の解釈にも深みを与えていると語ります。壱太郎は、これからも演じていない古典の役にも積極的に挑戦し、自身の芸をさらに高めていく意欲を示しています。