中東情勢の不安定化が日本企業に与える影響と業績予想の不確実性





中東情勢の不安定化が、日本企業の事業運営に深刻な影を落としています。特に、原油やナフサといった主要資源の供給体制に不透明感が漂い、多くの企業が今年度(2027年3月期)の業績見通しを立てられずにいます。昨年度(2026年3月期)のトランプ関税問題に続き、地政学的なリスクが企業経営を大きく揺るがしており、その影響は広範囲に及んでいます。
日本の上場企業の多くは3月期決算を採用しており、通常、5月末までに前期の決算発表と同時に、新年度の業績予測を開示するのが通例です。しかし、東京商工リサーチが実施した調査によると、2210社のうち65社が今年度の業績予想を公表していません。これは前年の37社と比較して75.7%もの大幅な増加であり、企業が直面する不確実性の高まりを明確に示しています。
業種別に見ると、「化学」分野の企業が最も多く、17社が業績予想の開示を見送っています。これは前年の3社から5.7倍に膨れ上がった数値です。開示を見送った理由としては、東洋紡が「石油・ナフサ由来の原材料の供給停滞や価格高騰の影響」を挙げ、エフピコも「ナフサ、ベンゼン価格の上昇による主要原料のポリスチレンなどの価格高騰」を指摘しています。また、原油を含む燃料価格の変動と調達不安から、「電気・ガス」関連企業でも6社(前年2社)が、物流コストの増加が響く「卸売業」でも同数の6社(前年2社)が見通しを未公表としました。一方で、昨年トランプ関税の影響を受けた「輸送用機器」業界では、未開示企業が1社(前年4社)にとどまり、中東情勢の影響が特定の産業に集中していることがうかがえます。
この状況の背景には、米国とイスラエルによるイラン攻撃をきっかけとした中東情勢の悪化があります。これにより、中東産原油輸出の主要ルートであるホルムズ海峡が事実上封鎖される事態となりました。6月17日には米国とイランが和平に向けた覚書に署名し、海峡の「自由通航」が合意内容に盛り込まれましたが、最終的な合意形成に向けてはイスラエルの動向など、依然として不安定な要素が残されています。貿易統計によれば、4月以降の原油輸入量は前年比で6割も急減しており、ナフサの調達難はインク不足を引き起こし、食品メーカーのカルビーが一部商品の包装パッケージをカラーから白黒に変更するといった具体的な影響も出ています。
このように、中東情勢の混乱は、日本企業のサプライチェーンやコスト構造に直接的な影響を与え、多くの企業が将来の業績を見通すことを困難にしています。経済のグローバル化が進む現代において、地政学リスクが企業活動に与える影響の大きさが改めて浮き彫りとなっています。