新進気鋭の割烹「照今」:若き才能が紡ぎ出す革新的な和食の世界







「照今」:古事記から着想を得た、過去を未来へ繋ぐ料理の哲学
割烹「照今」の誕生とユニークな運営スタイル
神宮丸太町駅から徒歩圏内に、今年3月、割烹「照今」がオープンしました。この場所は、かつて料亭「研野」があった高野川の畔で、その伝統を受け継ぎつつ、全く新しい試みに挑戦しています。「照今」という店名は、古事記の「稽古照今(稽古は今に照らす)」に由来しており、過去の経験や知識をただ受け継ぐだけでなく、現代に活かし、未来へと繋げていくという料理哲学を表しています。この店の一番の特徴は、若手料理人が3ヶ月ごとに交代で料理長を務めるという画期的なシステムです。彼らは「研野」で修行を積んだ実力者ばかりで、それぞれの個性とアイデアを存分に発揮し、既存の概念にとらわれない革新的なコース料理を創造しています。
異色の経歴を持つ若き料理長、田淵加奈子氏の挑戦
現在、「照今」の料理長を務めるのは、兵庫県三木市出身の田淵加奈子さんです。高校で料理の基礎を学び、飲食業界へ進んだ彼女は、温泉旅館や居酒屋での経験を積む中で、ボクシングに情熱を傾け、プロライセンスを取得するという異色の経歴を持っています。ボクシング引退後、職人気質な和食の世界に魅力を感じ、「研野」の門を叩きました。京都に来てわずか3年で料理長の重責を任された彼女は、「喜びと同時に、店の名に恥じないよう身が引き締まる思いでした」と語ります。彼女の多岐にわたる経験が、料理に深みと独創性を与えています。
多様なテーマで展開される、若手料理人たちの創造性
6月まで田淵料理長とタッグを組むのは、居酒屋「燕楽」のご子息である髙橋歩さんです。彼のルーツを反映し、今回のコーステーマは「居酒屋文化の再構築」となっています。7月からは中川雄貴さんが担当する予定で、テーマはまだ未定ですが、「肉?」「ナチュラルワイン?」といった熱い議論が交わされており、今後の展開に期待が高まります。「研野」の大将である酒井研野さんが選曲する店内のBGMは、季節感あふれる料理とともに、訪れる人々に心地よい空間を提供しています。
「照今」で味わう、五感に響く美食体験
「照今」で提供される料理は、16,500円のコース料理一本です。営業時間は17時と20時からの二部制で、火曜日のみ18時開始となります。今回は、田淵料理長と髙橋さんが手がける5月のコースから、厳選された4品をご紹介します。
華やかな彩りを添える「八寸」
まず、目に飛び込んでくるのは、季節の移ろいを表現した華やかな「八寸」です。鯛のちまき寿司、稚鮎の唐揚げ、小松菜と油揚げとつぶ貝のてっぱい、酢蛸、新生姜のガリなど、旬の食材が美しく盛り付けられています。今回の「居酒屋」というテーマに基づき、京都の伝統的なおばんざいである「てっぱい」が取り入れられており、笹岡氏は「季節の食材が盛り込まれ、続く料理への期待が高まります」と評しています。
春の息吹を感じる「椀物」
次に供されるのは、繊細な味わいの「椀物」です。椀種には、鯛のすり身で作られた真薯、つぶ貝、大根、蕗(ふき)、木の芽、蕨(わらび)といった春らしい素材がふんだんに使われています。今回のテーマである「居酒屋文化の再構築」を反映し、大ぶりの大根はおでんをイメージして煮含められています。笹岡氏の言葉通り、「和食は椀に始まり椀に終わります。しっかりと、春の香りを味わいたいです」と感じさせる一品です。