日常の道具から見つける、手放せない“本当のお気に入り”







アウトドア愛好家にとって、特別ではないけれど長く手放せない道具との出会いは、山を巡る楽しみの一つと言えるでしょう。今回は、山と自然をテーマにした雑誌『ランドネ』の編集に携わる二宮菜花さんに、彼女が大切に使い続ける道具の物語を伺い、その背景にある「本当のお気に入り」を見つけるヒントを探ります。
二宮さんは、かつては本格的な登山を好んでいましたが、現在は家族と共に里山や川辺で穏やかな時間を過ごすことを楽しんでいます。彼女の自宅は、編集部内でも「非常に整頓されている」と評判ですが、本人はこれを「アウトドア用品専用の部屋にすべてを押し込めているだけ」と謙遜します。この「見せない収納」は、彼女の道具に対する合理的な姿勢を象徴しています。必要なものを一箇所に集め、それ以上は細かく分類しない。こうした肩肘張らないアプローチは、彼女が日常で愛用する「手ぬぐい」にも見て取れます。
二宮さんの家には、約100枚もの手ぬぐいが存在します。これらは洗面所、キッチン、トイレなど家中のあらゆる場所で、タオル代わりに使われています。速乾性に優れ、臭いが気にならない手ぬぐいは、山のお土産として買い始めたのがきっかけで、今では旅行先でも購入するほど。自宅用と外出用で大まかに分けられ、洗濯すればリセットされるという考え方で、用途を限定せずに使われています。この自由な使い方が、手ぬぐいが彼女の生活に深く根付いた理由でしょう。
さらに、二宮さんには大学時代から手放せない「パタゴニアのダウンジャケット」があります。八ヶ岳登山を前に、店員の勧めで急遽購入したもので、当初は「一番のお気に入りではない」と感じていたそうです。しかし、その「芋虫のような」独特の色合いが今では気に入っており、買い替えの選択肢には全く入らないとのこと。10年以上もの間、多くの登山に同行し、数々の思い出を共有してきたこのダウンは、まさに「相棒」と呼ぶにふさわしい存在です。
二宮さんが道具を選ぶ基準は、決して完璧さや憧れだけではありません。むしろ、気兼ねなく、おおらかに使い続けられることに価値を見出しています。壊れても修理して使うという姿勢は、単なる機能を超えた道具との深い絆を示しています。人には理解されにくいかもしれないが、自分だけが感じるかけがえのない「お気に入り」。二宮さんの手ぬぐいやダウンジャケットの物語は、私たち自身の道具との関係性を見つめ直し、真に大切なものとは何かを問いかけてくれます。
二宮さんの「本当のお気に入り」を見つける旅は、所有するものの量を減らすことよりも、それぞれのアイテムとの心地よい関係性を築くことに重点を置いていることがわかります。道具は単なる機能的なツールではなく、日々の生活や経験を豊かにするパートナーであり、そのパートナーシップは、共に時間を過ごし、多くの場面を共有する中で育まれるものです。