日本の安全保障におけるAI戦略の再考:自立性と専門分野への注力




AIが織りなす国家安全保障の新時代:日本の針路
AIが国家安全保障の基盤となる時代
米国のアンソロピック社が開発した新型AI、「フェイブル5」および「ミュソス5」が、国家安全保障上の懸念を理由に米国政府から一時停止命令を受けた事件は、世界に大きな衝撃を与えました。この出来事は、AIがサイバー攻撃の高度化だけでなく、衛星画像の解析や軍事シミュレーションといった安全保障分野において、その重要性を飛躍的に高めている現実を浮き彫りにしました。平将明氏は、現代において最先端AIモデルが国家安全保障そのものであると指摘し、原油供給が途絶える事態よりも、AIの停止がより深刻な影響を及ぼしうるという認識を示しました。この新たな現実を前提に、日本はいかにしてAIのリスク分散を図り、自立性を確保していくべきかという問いが提起されています。
「ソブリンAI」と日本の戦略的選択
日本国内では、外国企業へのAI依存を避けるため、自国でAIを開発する「ソブリンAI」の実現を目指すべきだという意見が広がっています。しかし、自民党が発表したAIホワイトペーパー2.0では、「AI駆動型国家への構造転換」というタイトルが示すように、全面的な国産AIの開発ではなく、日本が強みを持つ分野に注力する戦略が提唱されています。平将明氏は、単に「国産AI」と一口に言っても、半導体、レアメタル、データセンター、クラウド、ファウンデーションモデル、アプリケーションといった多岐にわたる要素で構成されるため、何をもって国産とするのか冷静に判断する必要があると述べました。その上で、他国に決定的な弱みを握られないよう、特定のチョークポイントに資源を集中すべきだと主張。巨大なファウンデーションモデル開発でGAFAMのような企業と正面から競い合うのではなく、日本が不可欠な役割を担える分野、例えばロボットやドローン、自動運転などに用いられるフィジカルAI向けのVLA(Vision Language Action)ファウンデーションモデルや、医療などの専門領域に特化したバーティカルAIに官民連携で取り組むべきだと強調しました。これらの分野は、ウェブ上に存在しないセンサーデータなどを扱うため、日本に大きな強みがあるとされています。