樋口新葉、競技生活終え大学院へ:スポーツ心理学で新たな挑戦

22年間にわたる輝かしい競技生活に幕を下ろしたフィギュアスケーターの樋口新葉さんが、引退後の新たな舞台として大学院を選び、スポーツ心理学の探求に励んでいます。彼女は、自身の豊富な経験を学術的な視点から再評価し、未来の指導者としての道を切り開こうとしています。
フィギュアスケート引退後の樋口新葉、スポーツ心理学研究の深層
2026年3月、22年間のフィギュアスケート競技生活を終えた樋口新葉さんは、そのキャリアに区切りをつけ、新たな学びの場として大学院への進学を決断しました。2018年世界選手権での銀メダル獲得、2022年北京オリンピックでの5位入賞など、日本を代表するトップスケーターとして活躍してきた彼女が選んだのは、スポーツ心理学という分野でした。
現在、樋口さんはプロスケーターとしてアイスショー出演や振り付け、後進の指導に携わる傍ら、この春から大学院でスポーツ心理学を深く学んでいます。彼女は「当時の自分の状態がどのようなものだったのか、競技経験を学問的に分析することで多くの発見があります。この知識は、指導者として他者に教える際にも非常に役立っています」と語っています。
大学院進学を考え始めたのは、現役最後の1年から2年前のことでした。現役選手としての厳しいシーズンを戦いながらも、教授と密に連絡を取り合い、研究計画を練り、受験準備を進めてきました。競技と受験を両立させる生活は決して容易ではありませんでしたが、彼女を突き動かしたのは、ある強い思いでした。「私は幼少期からフィギュアスケート一筋で生きてきました。その反面、それ以外の経験、例えば学生らしい勉強や、放課後に友人とたわいのない話をするような、誰もが当たり前に経験するであろうことをほとんどしてこなかったんです。それが徐々にコンプレックスのようになっていました。だから、まずはきちんと学問を学びたいと思ったんです。そして、せっかくならこれまでの経験を活かせる分野として、スポーツ心理学を学ぶことを決意しました。」
大学院での学びは、樋口さんにとってこれまでにない新鮮な経験をもたらしています。これまでの「フィギュアスケート選手・樋口新葉」という立場を超え、多様な背景を持つ人々とフラットな関係で交流できることに大きな喜びを感じています。現在の研究テーマは「コーチと選手の関係性がパフォーマンスに与える影響」です。彼女自身の経験が色濃く反映されたこのテーマは、様々なスポーツの選手とコーチへのアンケートやインタビューを通じて、より効果的な指導方法を探求するものです。
彼女は自身のコーチを例に挙げ、「私のコーチは細かく指示を出すのではなく、『自分で考えなさい』というタイプでした。具体的に質問すると、ようやく教えてくれる。この指導法が、自分を客観的に見つめ、自ら考える力を養ってくれたと思っています。しかし、それは私個人に合った方法であり、他の選手には異なる指導法が必要かもしれません。指導方法は本当に人それぞれで、厳しい指導が良いとは限らず、優しいだけでは不十分です。選手一人ひとりに合った関わり方が存在するはずで、その違いを明確に言語化したいと考えています」と、研究への情熱を語りました。
樋口新葉さんの新たな挑戦は、スポーツ界全体にとって大きな示唆を与えます。アスリートが競技生活で培った経験を、学術的な知識と結びつけることで、スポーツの発展に貢献できる可能性を示しています。彼女の研究が、選手とコーチの関係性の最適化、ひいては次世代アスリートの育成に新たな光を当てることを期待します。