漫画「遙かな町へ」実写映画化、大谷亮平が語る時を超えた心の旅




過去と現在が交錯する感動の物語
『遙かな町へ』:日本での映像化が描く原風景
国際的に高い評価を受ける漫画家、谷口ジロー氏の代表作『遙かな町へ』が、ついに日本のスクリーンに登場しました。この作品は、『孤独のグルメ』や『神々の山嶺』といった著名な作品の作画で知られる谷口氏が、自らの手で生み出したオリジナルストーリーであり、フランスのアングレーム国際漫画祭をはじめ、イタリア、スペイン、ドイツなどで数多くの賞を受賞しています。
これまでにベルギー人監督が手掛けた欧州版の映画(2010年公開、日本では劇場未公開)は、原作の核となる部分を尊重しつつも、舞台設定をフランスに変更するなど、自由な脚色が加えられていました。しかし、今回の日本版では、谷口氏ゆかりの地である鳥取県倉吉市を舞台に選び、日本人キャストとスタッフが結集。原作の持つ繊細な情景と登場人物の心情を、より忠実に映像化することに成功しました。
物語は、原作が発表された1998年を起点とします。主人公の博史(48歳)は、偶然訪れた故郷・倉吉で母親の墓参りをする中で、34年前、自身が中学生だった1963年へと時を超えてしまいます。そこは、翌年に東京オリンピックを控えた活気ある時代。懐かしい風景、若き日の家族や友人たち、そして初恋の相手が目の前に広がる光景に、博史は驚きと感慨を覚えます。
大人の意識を保ったまま14歳の身体に戻った博史は、「過去をやり直す」かのように、新たな視点で日常を過ごします。戸惑いながらも、新たな発見に心を躍らせる日々。しかし、彼の心には一つの不安がありました。それは、夏が終わる頃に父親が家を出て行ってしまうという未来の記憶。博史は、父親の失踪を阻止し、家族の運命を変えることができるのか、という葛藤の中で物語は展開していきます。
大谷亮平が語る「中学生の心」の永続性
本作で主人公・博史を演じた大谷亮平氏へのインタビューを通じて、彼の役作りと作品への深い洞察が明らかになりました。物語の大部分は1963年が舞台となり、及川桃利氏が14歳の博史を演じますが、その内面は未来から来た48歳の男性という設定です。この映画の大きな特徴は、大谷氏による「心の声」のナレーションが、観客に博史の内面を深く理解させる役割を担っている点です。
大谷氏は、自身の出演形態について「非常に特殊だった」と語っています。スクリーンに登場するのは物語の冒頭と結末のみで、彼が演じる博史の主要な役割は、14歳の博史の行動を内面から語る「心の声」にありました。この役柄について、彼は特別な役作りを意識せず、原作を読んだ際に受けた直感的な印象に基づき、各シーンの感情を素直に表現したと述べています。
原作漫画については、オファーを受けてから初めて読んだそうですが、普段あまり漫画を読まない彼でも、「すっと入り込めて、最後まで一気に楽しめた」と語ります。主人公の年齢が自身と近いこともあり、作品への共感が非常に深かったと回顧しています。
共感した点として、大谷氏は「中学生に戻って、当時憧れだった女の子と付き合う」という普遍的な男性の願望を挙げ、そこに「ロマンを感じ、いつの間にか物語に深く入り込んでいた」と明かしました。この初期の楽しみから発展し、親に対する感情や、自身の年齢を重ねたからこそ湧き上がる深い感慨に触れ、もし異なる人生を歩んでいたらどうなっていたか、といった思考を巡らせながら読み進めたそうです。
14歳の博史を演じた及川桃利氏の演技については、撮影前に直接話し合う機会があったことに触れ、及川氏がこの難しい役柄に情熱と悩みを抱えていたことを理解していました。中身は48歳、外見は14歳という複雑なキャラクターをどのように表現するかという葛藤があったものの、完成した作品を観て、「彼の演技には迷いが感じられなかった」と大谷氏は称賛しています。
大谷氏は、及川氏の演技を観て、「何歳であっても博史は博史だと直感できた」と述べ、特に男性に共通する感情として、「40代になっても、10代から変わったようで変わっていない」という感覚が、自身の声と及川氏の演技との間に違和感なく響き合ったと語っています。博史が直面する葛藤の場面で、大谷氏が声に込めた感情と、及川氏が身体で表現した感情が、見事に融合していたと感じているようです。