電気自動車で巡る白馬:北アルプスの自然を満喫する新しい旅の形

北アルプスの壮大な山々に抱かれ、清冽な水と豊かな自然が息づく長野県白馬村が、環境に優しい新たな観光スタイルを提案しています。白馬村観光局が立ち上げた「電気自動車で白馬へ!」キャンペーンは、電気自動車(EV)でこの地を訪れる旅の魅力を広く伝えることを目的としています。そのキックオフイベントとして開催された「ジャパンEVラリー白馬2026」では、全国各地から100台を超える多様なEVが集まり、持続可能な旅の形を体験しました。
2026年7月11日と12日の2日間、「第13回ジャパンEVラリー白馬2026」が盛大に開催されました。このイベントは日本EVクラブと白馬EVクラブが共催し、全国のEVオーナーが「いざ、白馬!」を合言葉に長野県白馬村に集結する夏の恒例行事です。初日の会場となったのは、1998年長野冬季オリンピックの舞台でもあった白馬ジャンプ競技場。スキージャンパーの練習風景を背景に、13メーカー38車種103台もの多彩な電気自動車が並びました。特設ステージでは、三菱ミニキャブMiEVトラックの荷台を活用したユニークな設営の中、各ブランドのオーナーズクラブ紹介や、BYD、e-Mobility Powerといった協賛企業の社長らが登壇する「社長と話そう」などのプログラムが展開されました。これらの企画では、EVオーナーならではの具体的な体験談に基づいた意見交換が活発に行われました。
一方で、会場全体は非常に穏やかな雰囲気に包まれていました。芝生エリアでは、参加者たちがタープの下で自らのEVから給電し、ホットプレートでパンケーキやたこ焼きを調理したり、愛犬と一緒にくつろいだり、遠方からの友人と再会を喜びながらコーヒーを楽しむ姿が見られました。試乗会場には、ホンダ スーパーワン、日産リーフ、BMW i7 M70、MINIカントリーマンSE、VW ID.Buzz、BYD シーライオン6とシーライオン7といった最新のEVが用意され、さらに発表前のラッコの同乗試乗というサプライズも実施されました。毎年試乗を楽しみにしているという上田市からの参加者は、「EVオーナーではないけれど、毎年様々なEVに乗れるのが楽しみで来ています」と笑顔で語り、試乗車に乗り込んでいきました。
夜には、各自の宿泊施設に愛車を預け、クラフトビールと石窯ピザが楽しめるバー&レストラン「チェリーパブ」で懇親会「白馬EVナイト」が開催されました。参加者たちが親睦を深める間、愛車は宿泊施設で充電。地元の白馬EVクラブ代表、渡辺俊介氏によれば、白馬村は宿泊施設など100カ所以上にEV用充電器が設置されている、日本でも有数の「EVリゾート」なのだそうです。このジャパンEVラリー白馬は、15年前に宿泊施設「あぜくら山荘」のオーナーであった渡辺氏の父親の尽力により実現しました。当時、数台のEVが集まる中で、参加者がスムーズに充電できるよう、宿に充電コンセントを設置することからスタートしたといいます。渡辺氏の父親は、自動車好きであることに加え、地球温暖化による白馬の雪不足を心配し、環境保護への行動を起こしたいと考えていたとのことです。
スキーリゾートとして知られ、豊かな水が稲作と発電を支える白馬にとって、安定した降雪は生活の基盤です。白馬村には100年以上稼働している水力発電所があり、さらに小水力発電や公共施設のソーラー発電を合わせると、村民が少ないこともあり、電力自給率は120~130%にも達するといいます。「白馬の宿では、お帰りの際に水筒やペットボトルに蛇口から出る白馬のおいしい水をお持ち帰りくださいとご案内していますが、EVでいらした皆さんには、愛車を白馬のクリーンな電気で満たして帰っていただきたいです」と渡辺氏は語ります。2日目はエイブル白馬五竜スキー場を拠点にEVパレードが実施されました。北アルプスの雪解け水をたたえた美しい水田が広がる田園風景の中を、85台のEVが静かに走り抜けました。通常の自動車イベントのパレード出発地点ではエンジン音が響き渡るものですが、EVばかりのため非常に静かで、リラックスした会話ができるのが新鮮でした。窓を少し開けると、用水路を流れる水の音や鳥のさえずりが聞こえてきます。かつては航続距離の短いEVで白馬まで来るのは大冒険でしたが、今では新車のEVで普通にドライブを楽しみながら参加する人も多く、約4割が初参加だったとのことです。
最も遠方から参加した人に贈られる「白馬村長賞」は、日産アリアで岩手県から訪れたご夫婦が受賞しました。彼らは「気持ちよくドライブできて、休憩がてら2回充電で来られました」と、肩の力が抜けた様子で話しました。この「ジャパンEVラリー白馬2026」を契機に、白馬村観光局による「電気自動車で白馬へ!」キャンペーンも本格始動し、BEVで白馬を訪れた旅行者には、オリジナルノベルティグッズが贈呈されます。EVオーナーでなくても、EVレンタカーを利用するという選択肢もあります。筆者もガソリン車を所有しているため、今回はBYD シーライオン7を試乗会場へ運ぶという特権で、2泊3日間の白馬を満喫しました。シーライオン7(後輪駆動)のカタログ上の一充電航続距離は590kmです。実際には、都内をバッテリー残量94%、走行可能距離538kmの表示で出発し、上信越道の東部湯の丸SAまで約200km走行した時点でバッテリー残量は49%でした。ランチ休憩中に28分間急速充電器に接続し、バッテリー残量85%、走行可能距離473kmで再出発。白馬村観光局がある「スノーピークランドステーション白馬」には残量71%で到着しました。その後、黒菱スカイラインの急峻なつづら折りの道を走り、絶景とドライビングを楽しみました。抗老化効果が期待されるという天然水素泉「おびなたの湯」に浸かり、農業用水を小電力発電に利用している平川頭首工を見学し、青鬼集落の美しい棚田を眺めてから道の駅白馬へ。この時点でバッテリー残量は58%と余裕がありましたが、翌日に備えて土産物を選ぶ25分間に急速充電器で90%まで充電を行いました。この日は白馬でも最高気温35℃だったため、全行程でエアコンを使用し、ドライブモードは主に「スタンダード」、山岳路では「スポーツ」を選択して気兼ねなく走行しましたが、普段EVに乗り慣れていない筆者でも、長距離ドライブや地理不案内な観光地でバッテリー残量が不安になることはありませんでした。
北アルプスの美しい村を自由にドライブし、山に登り、温泉に浸かる。清々しい空気と美味しい水を全身で味わう中で、排ガスを出さずに走行していることに少し誇りを感じました。借り物の車ですらこれほどの満足感を得られたのですから、本来のEVオーナーの方々は、きっともっと素晴らしい気分だったに違いありません。