2026年FIFAワールドカップに向けた出入国管理の変革と課題

世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)は、2026年に開催されるFIFAワールドカップを前に、出入国管理における過去20年間の進化を分析した報告書を公表しました。史上初の3カ国共同開催となるこの大会は、デジタル技術を駆使した円滑かつ安全な国境管理の実現に向けた重要な節目となると指摘されており、特に「トラステッド・トラベル」モデルがその核をなしています。このモデルは、事前に承認されたリスクの低い渡航者が、迅速かつ予測可能な手続きで入国できるシステムを指します。
米国では、ワールドカップ開催に向けて590万件以上の電子渡航認証(ESTA)申請があり、そのうち500万件以上が承認されました。さらに、160万人を超える旅行者が「トラステッド・トラベラー・プログラム(TTP)」に登録し、国境通過の迅速化に貢献しています。技術革新としては、チケット保有者のビザ手続きを優先する「FIFA PASS」や、AIを搭載したデジタルアシスタント「COMPASS」が導入されました。しかし、米国では過去に特定国籍への入国制限やビザ審査の厳格化が進められていたこともあり、ワールドカップ開催にあたって、円滑な受け入れと安全管理の両立が大きな課題となっています。
メキシコは、特定国のビザ保有者に対する免除措置や自動化ゲートの導入を進め、カナダでは「ArriveCAN」アプリによる事前申告で主要空港の専用レーン利用を可能にするなど、各国で対応が進められています。WTTCの調査によれば、2006年のドイツ大会から2022年のカタール大会を経て、国境管理は従来のビザ発給から、本人確認、入国手続き、移動情報を連携させるデジタル基盤へと大きく変化しました。WTTCのグロリア・ゲバラ暫定CEOは、パスポート情報や渡航認証などの本人確認情報をデジタルで連携させ、出発前にリスク確認を完了させるシステムの重要性を強調し、今後の大規模イベントに向けて、相互運用可能なデジタルシステムの必要性を提言しています。
このように、2026年FIFAワールドカップは、デジタル技術を駆使した国境管理の新たな時代を象徴するイベントとなります。各国の取り組みや国際機関の提言は、今後の大規模国際イベントにおける出入国管理のあり方を示唆しており、より安全で効率的なグローバル移動の実現に向けた重要な一歩と言えるでしょう。