京都の歴史ある四条烏丸の路地裏に、2026年6月、「京割烹こおり」が静かに開業しました。店主の郡宣夫氏は、長年の研鑽を積んだベテラン料理人。その経験と情熱が注ぎ込まれたこの店は、お客様に心からの喜びを提供することを目指しています。特に注目されるのは、郡氏が名店「右源太」から受け継いだ「氣生根鍋」。この鍋料理を核として、旬の食材をふんだんに使った懐石料理の数々が、訪れる人々を魅了します。白木造りのカウンター席と半個室の空間は、落ち着いた雰囲気の中で食事を楽しめるよう配慮されており、郡氏の料理に対する真摯な姿勢が随所に感じられます。
郡氏は、学生時代のアルバイトで「美味しい」と言われた喜びをきっかけに料理の世界へ。東京での寿司店やホテル勤務を経て、京都の名料亭「右源太」で16年間修行し、そのうち6年間は料理長を務めました。50歳を目前に独立を決意した郡氏は、「お客様の喜ぶ顔が見たい」という一心で、自身一人で切り盛りするカウンター割烹を開業。京野菜検定や利き酒師、京料理人検定など、食に関する幅広い知識と技術を持つ職人です。彼が提供する料理には、これまでの経験と誠実な人柄がにじみ出ており、一品一品に深いこだわりと温かさが感じられます。
「氣生根鍋」が織りなす至福の味覚
「京割烹こおり」の料理哲学の中心にあるのが、郡宣夫氏が「右源太」から継承した「氣生根鍋」です。この鍋は、すっぽんの濃厚な出汁を基盤とし、季節の移ろいに合わせて具材を変えることで、一年を通して異なる風味を楽しめます。春夏の時期には、旨みが凝縮された鰻が加えられ、軽やかでありながら奥深い味わいを生み出します。一方、秋冬には、丹波篠山産の猪や美山産の熊といった、滋味豊かな山の幸が贅沢に使われます。これらの厳選された食材がすっぽんの出汁と合わさることで、互いの美味しさを最大限に引き出し、口の中で幾重にも重なる「うまみの掛け算」が実現されます。素材本来の持ち味を尊重しつつ、郡氏の卓越した技術と感性によって、鍋は単なる料理を超えた、心に深く響く一皿へと昇華されています。
この「氣生根鍋」は、料理人たちの間でも高い評価を受けており、その秘密は出汁の深みと具材の調和にあります。すっぽんを酒、水、昆布、醤油で丹念に6〜8時間煮込むことで、凝縮された旨みとコラーゲンが溶け出し、鍋全体の風味を豊かにしています。そこに、丹波篠山の「おゝみや」の猪や美山「田歌舎」の新鮮な野菜が加わることで、食材それぞれの持ち味が一体となり、深い甘みと複雑な香りを生み出します。郡氏は、この鍋を軸に懐石コースを組み立てており、先付の柿とシャインマスカットの白和えや、旬の恵みを詰め込んだ八寸、鰻の蒲焼の手巻きおしのぎなど、創意工夫を凝らした料理が続きます。これらの料理は、味覚だけでなく、視覚でも季節を感じさせる美しさも兼ね備えており、訪れるお客様に忘れられない食体験を提供します。
郡宣夫氏が追求するおもてなしの心と新たな挑戦
「京割烹こおり」の店主、郡宣夫氏は、「これまで精一杯やってきたことを提供して、お客様が笑顔で帰ってくれれば」と語るように、料理を通して顧客に心からの満足を提供することに情熱を傾けています。彼の料理は、長年の修行と経験に裏打ちされた確かな技術と、素材への深い敬意、そして何よりもお客様への誠実な気持ちが融合したものです。一皿一皿に込められた細やかな配慮と、食材の持ち味を最大限に引き出す工夫は、食べる人の心に温かい感動を呼び起こします。店内で提供される懐石料理は、19,800円から30,800円の3種類のコースがあり、「氣生根鍋」を含むコースでは、より深く郡氏の世界観を体験できます。柿とシャインマスカットの白和えや、季節感あふれる八寸、鰻の手巻きなど、どれもが旬の美味しさを凝縮した逸品ばかりです。
郡氏の「お客様を笑顔にしたい」という想いは、夜の懐石料理だけに留まりません。彼は現在、新たな挑戦として「朝ごはん」のコースを考案中です。その名も「月とすっぽん朝がゆコース」と題されたこのメニューは、すっぽんのミンチを使ったおかゆと、伝統的な瓢亭玉子を組み合わせた、滋味豊かで身体に優しい一品となる予定です。この朝のコースは、夜の重厚な懐石料理とは異なり、一日の始まりを穏やかに、そして贅沢に彩るものとして期待されています。郡氏の料理は、単に美味しいだけでなく、食べる人の心と体を満たすことを目指しています。彼の料理に対する真摯な姿勢と、常に新しい可能性を追求する探究心は、今後も多くの人々を魅了し続けることでしょう。夜の食事はもちろんのこと、朝の訪れも待ち遠しい、そんな特別な一軒です。