スローフラワーの探求:三井聡子氏が神奈川で育むオーガニックな花の世界




花々は人々に喜びと癒やしをもたらす存在です。その花の持つエネルギーを伝えることに情熱を注ぐ人物がいます。神奈川県の藤野の豊かな自然の中で、自由に花を育てる「four peas flowers」を訪れ、その活動に触れてみました。代表の三井聡子氏は、花卉農家と翻訳・通訳という二つの異なる分野で活躍しながら、持続可能な社会への貢献を目指しています。
スローフラワーの理念と実践
約200平方メートルの広大な畑で、三井聡子氏は農薬や化学肥料を使わずに観賞用の花々を育てています。彼女はアメリカで生まれた「スローフラワー」という概念に深く共感し、オーガニックな花卉栽培に力を入れています。この理念は、自然のサイクルに沿って旬の花を栽培し、環境への負荷を最小限に抑えながら、地域での生産と供給の循環を作り出すことを目指しています。三井氏の取り組みは、日本においてまだ先行者が少ない分野であり、彼女はアメリカ・ワシントンのスローフラワー農家から学び、独自の栽培方法を確立してきました。育てた花をそのまま出荷するのではなく、自らブーケを作成して販売することで、畑で育った花々の個性を最大限に生かしています。多種多様な花を少量ずつ栽培することで、ブーケ作りにおける豊かな表現力を追求しているのです。
「スローフラワー」の考え方は、食の分野における「スローフード」と同様に、持続可能性と地域性を重視しています。三井氏は、この理念に基づき、花が持つ本来の美しさを引き出す栽培に挑戦しています。当初は硬かった土壌も、10年間の継続的な努力によって、足首が埋まるほどふかふかの豊かな土へと変化しました。この畑で育つ花々は、太陽に向かって自由に伸び、茎の自然な曲がり具合が特徴です。お客様もこの個性豊かな花々に魅了され、特に茎が曲がっているほど喜ばれるとのこと。露地栽培によって茎が強く育つため、花持ちが良いという利点も、三井氏が提供する花の大きな魅力となっています。
神奈川県藤野への移住と「four peas flowers」の誕生
三井氏の畑があるのは、神奈川県相模原市の藤野地域です。都心から車で約1時間半というアクセスでありながら、昔ながらの里山が残る豊かな自然が広がっています。もともと西荻窪に住んでいた三井氏は、キャンプを通じてこの地の魅力に惹かれ、16年前に移住を決意しました。藤野はかつて甲州街道の宿場町として栄え、第二次世界大戦中には藤田嗣治や猪熊弦一郎といった多くの芸術家が疎開した歴史を持つ場所です。このような背景から、移住者を受け入れる土壌があり、創造的で開かれた環境が形成されてきました。移住後、現在の住居に引っ越してからは、徒歩3分の場所に位置する畑を借りることができました。この地域は80世帯ほどの典型的な里山集落で、高齢化が進む中で耕作放棄地となっていた場所を、三井氏が再生させたのです。
「four peas flowers」という名前には、英語の「peas in a pod」(さやに入った豆のようにそっくりで仲が良いこと)という言葉に由来し、4人の子どもを持つ三井氏の思いが込められています。現在では、性別による偏見を乗り越え、共に花を育てる3名の女性スタッフと三井氏自身を指す言葉となっています。このチームで育てられる花々は、屋外での栽培によって、茎が丈夫に育ち、花持ちが良いのが特徴です。また、太陽の光を浴びて自由に伸びるため、一つひとつの花が個性的な表情を見せます。お客様は、こうした自然な状態の美しさを高く評価しており、花の持つ生命力や力強さが、人々に喜びと感動を与えています。