ホラー漫画家・鳩ヶ森が描く"日常に潜む狂気":作品『周波数』の世界

「第2回朝日ホラーコミック大賞」漫画部門で栄冠に輝き、現在pixivで『仮門』を連載しているホラー漫画家・鳩ヶ森氏が、彼の作品『周波数』に込めた思いを明かしました。「日常に潜む狂気」をテーマに掲げる氏が、古びたラジカセを題材に、かすかな恐怖を描き出した本作の背景を深く掘り下げています。
この物語の核にあるのは、夜の静寂な自室で、幼い頃に誰もが一度は背後に感じたであろう、あの漠然とした不気味な気配です。鳩ヶ森氏自身、その記憶が作品の着想源となり、読者にもあの頃の薄ら寒い感覚を思い出してほしいと語ります。また、物語の重要な要素であるラジカセは、彼自身のラジオへの深い愛情から選ばれました。学生時代、勉強のお供として親から譲り受けたラジカセが、最終的には漫画のアイデアへと昇華されたというエピソードも披露されました。
作品のタイトル『周波数』は、レトロなラジカセのダイヤルを回し、ノイズの中から特定の放送を探す行為に由来しています。子供心には理解不能だった混線した外国語放送が、大人になった今では単なる現象と理解できるものの、その時の怪奇な体験が「日常に突如として恐怖が顔を出す」という、氏の目指す漫画表現へと繋がりました。特に、お化けの描写においては、従来の「人怖」とは異なる異形の存在を追求し、その恐ろしさを表現する上で「目」だけでなく「歯」が重要な鍵であるという新たな発見があったと述べています。作中でラジオから流れる一家心中事件のニュースと、その後の続報が読者にさらなる不安を煽り、年末年始の夜更けに、日常のすぐそばに潜む静かな恐怖を体験するきっかけとなるでしょう。
私たちの日常は、時に予期せぬ形で非日常的な恐怖と隣り合わせになることがあります。この作品が示すように、身近な物事や些細な現象の中にこそ、深い恐怖の源が隠されていることを認識することは、感受性を豊かにし、人生に新たな視点をもたらします。不安や恐れを感じる対象は、必ずしも遠い存在ではなく、我々のすぐそばに息づいているのです。この気づきは、日常をより深く、そして多角的に捉えるための貴重な教訓となるでしょう。