エクスペディア・グループが実施した最新調査は、旅行業界における人工知能(AI)の導入と利用に関して、興味深い「信頼ギャップ」が存在することを浮き彫りにしました。旅行者はAIが提供する利便性には魅力を感じるものの、最終的な判断や責任をAIに完全に委ねることにはためらいがあるようです。この調査結果は、AI技術が社会に浸透していく過程で、利用者からの信頼をいかに構築していくかが重要であることを示唆しています。
旅行におけるAI利用の現状と課題
2026年3月10日から25日にかけて、米国、英国、インドの成人5,700名以上を対象に行われたエクスペディア・グループの「AI Trust Gap(AIに対する信頼ギャップ)」調査は、旅行者のAIに対する複雑な感情を明らかにしました。具体的には、回答者の66%が「AIに代わって旅行の購入や予約をすることに信頼を置けない」と回答しています。これは、旅行という個人的かつ時には予期せぬ事態が発生しうる体験において、AIの判断の不確実性に対する懸念が主な要因と考えられます。
しかし、AIの潜在的な利便性に対しては、旅行者は前向きな姿勢を見せています。例えば、53%の人がAIによる旅行の選択肢の提案に抵抗がなく、42%が価格のモニタリングや最適な予約時期の判断に、そして40%が旅程の作成にAIを活用することに意欲的であることが示されました。このことから、旅行者はAIを情報収集や計画立案の補助ツールとして高く評価していることが伺えます。
一方で、実際の予約段階では、多くの旅行者がAIプラットフォームよりも信頼できる既存の旅行ブランドを選ぶ傾向にあります。調査では、68%の回答者が、AIプラットフォームよりも信頼できる旅行ブランドでの予約を好むと回答しました。この背景には、フライトの遅延やキャンセル、宿泊施設の予約トラブルなど、旅行に特有の不確実性が存在します。これらの問題が発生した際に、情報提供だけでなく、状況に応じた柔軟な判断や人間によるサポートが求められるため、旅行者はAIに完全に依存することに不安を感じているようです。
エクスペディア・グループは、この「AI信頼ギャップ」の背景として、旅行の予測不可能性を指摘しています。AIはデータに基づいて最適な解を導き出すことができますが、人間の感情や予期せぬ状況への対応力には限界があるというのが、旅行者の本音なのかもしれません。
AIと人間の共存が切り拓く旅行の未来
この調査結果は、AI技術の進化が目覚ましい現代において、旅行業界がAIをどのように活用していくべきか、重要な示唆を与えています。AIは旅行計画の効率化やパーソナライズされた提案において強力なツールとなり得ますが、最終的な決定や緊急時の対応においては、人間の専門知識と経験、そして共感力が依然として不可欠であるという点です。今後は、AIと人間の役割を明確にし、それぞれが得意な領域で協力し合うハイブリッドなサービスモデルが、旅行業界の新たなスタンダードとなるでしょう。これにより、旅行者はAIの利便性を享受しつつ、人間による安心感とサポートを得られる、より充実した旅行体験を享受できるようになることが期待されます。