中村鷹之資、欧州で歌舞伎の美を披露:女方の伝統と魅力




日本の美意識が息づく歌舞伎、欧州を巡る感動の旅
伝統の継承と新たな挑戦:中村鷹之資、欧州公演で「女方」を演じる
今年春、「MEET KABUKI-The Art of “Onnagata” Europe Tour」と題された公演が開催され、中村鷹之資さんはフランスのパリ、イタリアのローマ、ドイツのケルンを巡りました。主に男役を演じることで知られる鷹之資さんですが、この度、女方の舞踊を披露しました。欧州公演に先立って東京で行われた記者会見では、海外の観客に歌舞伎の女方の魅力を伝えたいという、彼の強い決意が語られました。
歌舞伎の礎「女方」の真髄と若き才能の舞
鷹之資さんによれば、女方は歌舞伎の根幹をなす要素であり、男役を演じる上でも女方の心理を理解することが不可欠だと述べています。歌舞伎俳優は皆、幼い頃から女方の舞踊の稽古を積むことが慣例となっています。今回彼が披露したのは、若い女性の初々しい恋心を描いた「藤娘」でした。この演目は、女方の基礎と日本舞踊、そして歌舞伎舞踊の神髄が凝縮された、稽古には欠かせない作品だと彼は語ります。鷹之資さんは、15歳の時に自身の勉強会「翔之會」でこの演目を初めて披露しています。
四世紀にわたる研鑽:歌舞伎が育んだ「女方」の技芸
歌舞伎は、出雲阿国によって始められた「かぶき踊り」(1603年)が起源とされています。当時の人気が過熱し、幕府が女性の舞台出演を禁じたことから、男性が女性役を演じる「女方」が生まれ、400年という長い歴史の中でその演技は磨き上げられてきました。荒々しく豪快な演技で頭角を現した鷹之資さんですが、その舞踊の技量も高く評価されています。彼の父は人間国宝であった五世中村富十郎(1929~2011)で、男役も女役もこなす踊りの名手でした。江戸時代中期に活躍した初代富十郎もまた、代表的な女方の一人として知られ、特に舞踊を得意としました。彼が初演した「京鹿子娘道成寺」は、女方舞踊の代表作として今日まで受け継がれています。また、初代富十郎の父は、伝説的な女方である芳澤あやめ(1673‐1729)です。彼女が説いた女方の心得を記した芸談「あやめぐさ」には、「普段から女性のように生活しなければ、優れた女方にはなれない」といった教えがあり、後の女方たちに大きな影響を与えました。