名湯有馬温泉で体験する暮らすような素泊まりの旅





伝統と現代が融合する、新しい有馬の過ごし方
歴史息づく有馬温泉の宿「小宿 駿河亭」の魅力
昨今の物価上昇を背景に、温泉旅行をより経済的に楽しむ手段として、素泊まりの宿泊が賢い選択肢として浮上しています。特に有馬温泉のような大規模な温泉地では、宿泊費を抑えるために素泊まりの宿を選び、食事は地元の多様な飲食店で好みに合わせて楽しむのがおすすめです。日本三古湯に数えられ、関西の奥座敷として知られる有馬温泉は、江戸時代後期には「有馬千軒」と呼ばれるほど栄え、格式高い「坊(宿坊)」の他に、庶民向けの自炊・滞在型「小宿」も多数存在しました。現代において、この古き良き「小宿」文化が有馬温泉で再び息を吹き返し、温泉街の散策や共同浴場、飲食店での食事を自由に楽しむ「暮らすような滞在」が、新たなトレンドとなっています。今回紹介する「小宿 駿河亭」は、温泉街の中心部に位置する湯本坂沿いに立つ、1926年築の木造3階建ての趣ある建物で、国の登録有形文化財にも指定されています。
有馬温泉街全体を一つの宿として楽しむコンセプト
「小宿 駿河亭」の運営を担う「陶泉 御所坊」の予約主任、上西昭雄氏によれば、この建物は元々、1階が「駿河屋」という有馬籠の竹細工工房兼店舗、2階が住居、3階が湯治客向けの貸し間として使われていました。1191年創業という有馬温泉最古の湯宿である御所坊の15代目当主、金井四郎兵衛氏が、取り壊しの危機に瀕していたこの歴史的建造物を再生させ、2020年に1階を店舗、2・3階を小宿としてリニューアルオープンしました。現在では「駿河亭」を含む五つの個性豊かな小宿ブランドを展開し、「温泉街全体を一つの大きな宿と見立て、宿泊客には街歩きや地元の食事を心ゆくまで楽しんでほしい」という思いが込められています。
文化財の宿で体験する、手頃な価格での特別な滞在
「駿河亭」には常駐スタッフがいないため、チェックインは「御所坊」で行います。宿の入り口は暗証番号式のデジタルドアロックで、湯巡りの際に鍵を持ち歩く手間が省けます。玄関で靴を脱ぎ、2階へ上がると、歴史を感じさせる柱がそのまま残された、落ち着いた雰囲気の12畳和室が広がります。室内にはゆったりとしたセミダブルベッドが2台設置されており、トイレ、洗面台、シャワーブースが完備されていますが、浴槽はありません。この点が、好立地の文化財にリーズナブルな価格で宿泊できる理由です。窓からは湯本坂の賑やかな景色が見下ろせ、行き交う人々を眺めながら、この温泉街が長い年月を経て育んできたであろう活気に思いを馳せる、そんな特別なひとときを過ごすことができます。
本記事は、歴史ある有馬温泉で、物価高騰時代における新しい旅の形として注目される「素泊まり」の魅力を探るものです。文化財に指定された「小宿 駿河亭」を例に、手頃な価格で地域の魅力を深く体験できる、新しい宿泊スタイルを紹介します。温泉街全体を一つの宿と見立てることで、観光客はより自由に、そして地元に溶け込むように旅を楽しむことができます。