子どもの才能開花、遺伝と環境の相互作用

行動遺伝学者の安藤寿康氏が提唱するように、子どもの天賦の才を見出し、それを育むことに関心を持つ親は多い。しかし、その才能をどのように発見し、どうすれば開花させられるのか。本記事では、早期教育の限界と、子どもが自らの興味を深く探求できる環境の重要性に焦点を当て、才能開花の真髄に迫る。
幼少期から多種多様な習い事をさせることで、子どもの才能を刺激し、伸ばせるとの考えが広まり、早期教育が盛んに行われている。しかし、安藤氏はこれに対し、「早期教育が子どもの突出した能力を開花させるという科学的根拠は薄い」と異議を唱える。実際に、幼い頃に神童と呼ばれた子どもが、そのまま世界的な大人になるケースは稀であるというデータも存在するそうだ。安藤氏は早期教育自体を否定するわけではなく、親が子どもにさせたいことがあり、時間や費用、子どもの体力が許す範囲であれば良いと考える。しかし、親が与える「ある程度の指針」は必要としつつも、幼少期から始めたからといって、その分野で必ずしも優れた結果が出るとは限らない。なぜなら、人間のあらゆる能力には遺伝が深く関与しているからだ。
親がどんなに意図的に習い事をさせても、子どもが「面白い」と感じれば熱中し、そうでなければすぐに離れてしまう。この「面白さや手応え」を感じるかどうかも、遺伝的な素質によるところが大きい。では、子どもが熱中できるものを見つけるまで、あらゆることに挑戦させるのが最善かというと、そうではない。幼少期は未経験のことが多いため、どんな習い事でもある程度は楽しめるだろうし、継続すれば一定レベルまでは上達するかもしれない。しかし、それがその子本来の素質や才能の発揮に繋がるとは限らない。
才能の開花にとって最も重要なのは、子どもが興味を抱いたことを、どこまでも深く探求できる「自由度の高い環境」である。このような環境に、子どもが憧れを抱くような教師や指導者が一人でもいれば、子どもはその影響を受けて、才能が一気に花開く可能性が大いにある。逆に、カリキュラムが画一的に決められた習い事や、受験対策を主眼に置いたメソッド型の教室では、自由度が低いため、子どもの素質を伸ばすことは難しいと安藤氏は指摘する。才能が開花するきっかけは、習い事に限らない。例えば、幼稚園で聴いたピアノの音に魅了されたり、親とのキャッチボールが楽しかったり、祖父との将棋が面白かったりと、日常の経験が特定の分野への関心を掻き立て、夢中になる中で才能を発揮するようになる。つまり、子どもの才能開花を後押しするために、多大な時間や費用をかけて習い事や体験学習、旅行、イベントなどに参加させる必要はない。
子どもが自ら夢中になり、才能の兆しが見え始めたら、その時にこそ、できる範囲で時間と費用をかけ、本物の体験をさせてあげるべきである。これが、子どもの才能をさらに大きく育む鍵となるだろう。