渡辺いっけいが語る『月影のゴールデン街』と役者人生の変遷

俳優の渡辺いっけいが、錦信次監督の新作映画『月影のゴールデン街』で主演を務めるにあたり、自身の役作りや長年の俳優としての心境の変化について語った。新宿ゴールデン街を舞台にした本作では、バーのマスター・青木役を演じる渡辺。彼は、かつて演劇活動をしていた頃からゴールデン街に縁があり、その地の持つ独特の雰囲気に深い親しみを覚えているという。今回の役どころは、これまでの能動的な演技スタイルとは一線を画し、受け身の姿勢で物語に溶け込むことを意識したと明かした。さらに、俳優としてのキャリアを振り返り、若い頃の「爪痕を残したい」という意欲から、年齢を重ねるにつれて「やらないこと」の大切さに気づいたと語る。共演者たちとのエピソードや、自身のパーソナルな部分が役柄に影響を与えるという俳優ならではの葛藤も披露し、役者という仕事の奥深さを垣間見せた。
渡辺いっけい、映画『月影のゴールデン街』で新宿のバーマスターを熱演
2026年10月30日よりテアトル新宿、アップリンク吉祥寺、テアトル梅田などで全国順次公開される映画『月影のゴールデン街』で、俳優の渡辺いっけいが主演を務める。錦信次監督によるこの作品は、新宿ゴールデン街にある名画のポスターで飾られたバー「スイカズラ」を舞台に、映画好きのマスター・青木(渡辺いっけい)、テレビマンのギンジ、画伯といった常連客たちが織りなす35年間の物語を描いている。渡辺いっけいは、1962年愛知県出身。劇団☆新感線や唐十郎主宰の状況劇場での舞台経験を経て、1992年のNHK連続テレビ小説「ひらり」で注目を集めて以来、ドラマ、映画、舞台で数多くの作品に出演している。最近では、「科捜研の女」シリーズ、映画『いつくしみふかき』、アニメーション「おしりたんてい」での吹替・ナレーションなど、多岐にわたる活躍を見せている。今回のマスター役のオファーに対し、渡辺はいっけいは、若い頃に花園神社でテント芝居をしていた経験や、ゴールデン街の知人の店に通っていたことから、この街に特別な愛着を抱いていることを明かした。当初は、自身のイメージと役柄とのギャップに戸惑いもあったというが、最終的には「ただそこにいる感じで映るべきだ」という境地に至り、客の話を聞くことに重きを置くマスター像を築き上げた。撮影現場では、少人数のスタッフ体制の中、自らが小道具の配置に気づくなど、まさにマスターとして店を俯瞰する役割を自然にこなしていたと監督も絶賛している。
このインタビューを通じて、渡辺いっけいさんの俳優としての深みと人間性が垣間見えました。特に印象的だったのは、若い頃の「爪痕を残したい」という衝動から、年を重ねるごとに「やらないこと」の大切さに気づくという変化です。これは、多くの人が経験するであろう成熟の過程を象徴しているように感じられます。また、役柄が自身のパーソナルな部分に侵食してくるという話は、俳優という職業の持つ独特の危険性と魅力を物語っています。彼が演じる青木マスターのように、穏やかな気持ちで周囲を見守る役を通して、彼自身もまた新たな発見があったというのは、非常に興味深いですね。『月影のゴールデン街』は、そんな渡辺さんの新たな一面と、彼が大切にする「他者との関わり」の温かさを感じられる作品になることでしょう。観客にとっても、映画の中の「スイカズラ」のような、心の拠り所となる場所を見つけるきっかけになるかもしれません。