「界 草津」滞在記:湯治と美食、秘密のトンネルが織りなす極上の温泉体験

先日、2026年6月に新たにオープンした「界 草津」にて、充実した2泊3日の滞在を経験しました。この宿泊施設は、群馬県吾妻郡草津町に位置しており、開業前から耳にしていた「宿泊者専用トンネル」が、実際に訪れてみると想像以上の魅力に満ちていました。今回は、この「界 草津」の概要と特筆すべき点をご紹介いたします。
まず、この施設は既存の建物を改築したものではなく、全くの更地から、細部にまでこだわり抜いて新築された最新鋭の宿泊施設です。全94室が「界」ブランド最大規模を誇り、広大な自然の中に贅沢に配置されています。特に注目すべきは、「宿泊者専用トンネル」で、宿の高台から賑やかな西の河原公園までスムーズに移動できます。温泉に関しては、「万代鉱源泉」と「西の河原源泉」という異なる2種類の名湯が引かれており、一つの大浴場で両方を楽しめる贅沢な湯めぐりが可能です。また、公式サイトからの予約で2泊目が半額となる連泊優待プランが用意されており、長期滞在で心身を癒す「現代湯治」に最適な環境です。敷地内には日帰り利用も可能な「蕎麦割烹 SAI」があり、連泊でも飽きることなく多様な食体験を提供します。さらに、大型犬を2頭まで受け入れる露天風呂付き愛犬ルーム(72m2、3室限定)も完備。館内には絹糸を用いた美しい織物アートが随所に飾られ、布やテキスタイル愛好家にはたまらない空間となっています。冬には草津温泉スキー場が目の前にあるため、ウインタースポーツと温泉を同時に満喫できる点も大きな魅力です。
「界」ブランドの特色である地域性を反映した「ご当地部屋」は、通常数室に限られることが多いですが、「界 草津」では全94室が「シルクアートの間」として設計されています。これは、かつて養蚕が盛んだった群馬の歴史と染織文化を現代的に表現したものです。客室に入るとまず目を引くのは、テキスタイルデザイナー須藤玲子氏が監修した、雄大な山々と立ち上る湯けむりを表現した美しいグラデーションの織物壁です。今回利用させていただいたのは、全94室中21室のみ(愛犬ルーム含む)の露天風呂付き客室でした。この露天風呂には温泉ではなく「真湯」が使用されており、強酸性の草津温泉で十分に温まった後、肌への刺激を和らげる「仕上げ湯」として利用することが推奨されています。作務衣に着替え、お茶菓子「こんにゃく絹餅」を味わいながら、テラスから広がる緑豊かな景色を眺める時間は、まさに究極の湯治体験の始まりを感じさせました。
宿に到着して一息ついた後、いよいよ「界 草津」最大の魅力である「宿泊者専用トンネル」を訪れました。トンネルへのアプローチは森の中の小径となっており、まるで森林浴をしているかのような心地よさでした。小径を進むと現れる黒い小屋は、約20m下のトンネルへと誘うエレベーターです。エレベーターを降りると、噂に聞く約80mの幻想的なトンネルが目の前に広がります。トンネルを抜けた先に広がるのは、湯けむりが立ち込める賑やかな西の河原公園。この瞬間、「木立の湯宿と温泉街をつなぐトンネル」という「界 草津」のコンセプトを肌で感じることができました。
2泊3日の滞在中、幾度となくこのトンネルを利用して宿と草津温泉街を行き来しましたが、その詳細については後編でご紹介するとして、今回は宿の温泉大浴場とラウンジについて触れます。“湯小屋棟”と呼ばれる大浴場には、草津温泉の主要6大源泉から厳選された「万代鉱源泉」と「西の河原源泉」という、全く異なる泉質の二つの名湯が引かれています。広い窓から中庭の緑が望める内風呂の「あつ湯」では、草津ならではの強い刺激を持つ「万代鉱源泉」が源泉かけ流しで提供され、開放感あふれる露天風呂も同様に「万代鉱源泉」を楽しめます。一方、小さな「ぬる湯」の浴槽には、それぞれの源泉が贅沢に用意されており、特に「西の河原源泉」は草津温泉街でも限られた宿にしか引かれていない大変貴重なものです。ただし、草津の温泉は日本有数の強酸性であるため、長時間の入浴は避け、湯上がりには隣接するラウンジでフリーのアイスキャンデーを楽しみながら体を休めるのがおすすめです。このラウンジ棟には、薪がはぜる音に癒される「暖炉ラウンジ」や、畳でくつろげるスペースがあり、旅の疲れを癒すのに最適です。また、「界」ではおなじみの、地域の歴史や温泉に関する書籍が並ぶトラベルライブラリーもこの一角にあります。
滞在初日の午後には、暖炉ラウンジで毎日2回開催される「温泉文化いろは」に参加しました。これは、全国の「界」施設で今年6月から始まった体験プログラムで、地域の温泉の歴史や背景を楽しく学ぶことができます。「界 草津」では、「~草津よいとこ、一度は聞いて~草津温泉まち歩きのすすめ」と題し、手作りの巨大な飛び出す絵本が使われました。草津の源泉が湧く白根山の物語から、江戸時代に形成された温泉街の構造に至るまで、知的好奇心を刺激される内容が満載でした。
初日の夜は、全席半個室のお食事処で「上州豊伝会席」を堪能しました。群馬の豊かな食文化を表現したこのコース料理は、まず「花豆味噌とイノシシのリエット 湯もみ見立て」から始まりました。ミニチュアの湯桶に立てかけられた磯部温泉の名物「ご縁せんべい」をスプーンで「湯もみ」しながらリエットと共にいただく趣向は、遊び心に溢れていました。「煮物椀」の後に供されたのは、「界」の夕食の象徴とも言える華やかな「宝楽盛り」。重箱の蓋には群馬の郷土文化「上毛かるた」の絵札がデザインされ、その頭文字を並べると「か・い・く・さ・つ」となる粋な演出には感銘を受けました。また、重箱が置かれたお盆は、湯畑のひょうたん型回廊をモチーフにするこだわりが感じられました。サクサクの「揚げ物」の後に登場した「台の物」は、地元厳選の肉と野菜を特製出汁でいただく「上州常夜鍋」です。出汁の中で柔らかく煮込まれた鶏もも肉は、箸を入れるとほろりと崩れ、濃厚な旨味が溶け込んだスープと共に味わう至福の美味しさでした。この素晴らしい食体験は、草津温泉と群馬の伝統を五感で感じさせてくれました。
今回の滞在は、温泉だけでなく上州の伝統工芸や美食を堪能する一日となりました。後編では、二日目に体験した「上州座繰り」のご当地楽、トンネルを通って散策した草津温泉街、外湯めぐり、そして「蕎麦割烹 SAI」での夕食など、連泊ならではの「界 草津」の多様な魅力をお伝えします。この地でしか味わえない特別な体験が、訪れる人々を待っています。