「自分物語」の力で人生を豊かに:苦い経験を貴重な財産に変える

「自分物語」で、あなたの人生をデザインする
自分を主人公に据える「異端児風」設定の極意
「異端児風」の設定とは、一言で言えば「自分を主人公とした物語を創り上げること」です。具体的には、「主人公は何を追い求めるのか?」という「テーマ」と、「共感できる理想の主人公像は?」という「キャラクター」の二つの問いを深く考察し、これまでの人生の点と点を結びつけるように考えます。これは、単に華々しい経歴を羅列する一般的な自己紹介とは一線を画します。まず「テーマ」の設定についてですが、その素材となる「点(経験)」を見つけ出すには三つの秘訣があります。第一に、仕事だけでなく、幼少期まで遡って記憶を呼び起こすこと。第二に、出来事だけでなく、自分がどのような人間だったか、何が好きで何が嫌いだったか、という感情を掘り起こすこと。そして第三に、ほろ苦い失敗談や、心から楽しいと感じた経験を思い出すことです。特に、「子どもの頃から、自分は○○だった」という振り返りは、自己の本質的なテーマを見つけ出す上で非常に有効です。この「○○だった」は、ポジティブな側面でもネガティブな側面でも構いません。
過去の経験から「テーマ」と「キャラクター」を紡ぎ出す
ポジティブな「○○だった」の典型例は「○○が好きだった」です。一見すると関連性のない職歴も、広い視野で振り返ることで「○○が好き」という共通点が見つかることがあります。この「好き」を追求することこそが、自身の物語の主題となり得るのです。かつて、クライアントの中には「音響関連の職を転々としてきたが、これからは実家の旅館経営も手伝いたい。自分のキャリアには一貫性がない」と悩む女性がいました。私が「どのような幼少期を過ごされましたか?」と尋ねると、彼女は「実家の旅館で育ったので、自然の音を聞き分けるのが好きだったかもしれません」と遠い目をしながら語りました。そこで私は「音、あるいは音の効果に魅力を感じていらしたのですね。これまでの音響の仕事も、これからの静謐な旅館も、素晴らしい『音の響き』を追求することがテーマになりそうですね」と伝え、彼女自身のキャリアに一貫したテーマを見出す手助けをしました。ネガティブな「○○だった」は、「○○が嫌いだった」や「○○で失敗した」といった、苦い経験からの気づきに繋がります。例えば、「子どもの頃から、周囲に『○○ちゃんは△△な子』というイメージを押し付けられるのが、本当は嫌だった」と感じている方は少なくないでしょう。この経験は、見方を変えれば「自分の限界や殻を打ち破ること」、あるいは「他者が殻を破る手助けをすること」といった、胸躍る物語のテーマへと変換できる可能性があります。多くの物語が、苦い経験から始まるように、自身の物語においても、そうした経験は貴重な財産となるのです。
理想の主人公像を描き、物語に活力を吹き込む
テーマが見つかったら、次は主人公のキャラクター設定です。主人公は自分自身であるため、ゼロから全く新しい自分を作り上げるのは不自然かもしれません。ここでも、過去を振り返り、点と点をつなぎ合わせる作業が鍵となります。私が提案するのは、自分が愛読している小説やドラマ、漫画に登場する憧れのキャラクターに自分を重ね合わせる方法です。憧れのキャラクターに自分を投影すると、まるで自分もそのキャラクターと同じことができるような気がしてくるものです。実際、この現象は数多くの研究によって裏付けられています。例えば、ヒーローの主人公になりきっている子どもほど集中力が高まったり(※1)、活躍する働く女性キャラクターが登場するドラマを視聴した女性の方が、実際に同じ職種に就く割合が高まったり(※2)と、その効果は顕著です。好きなキャラクターと自分を重ね合わせることで、主人公としての自分が際立ち、イメージが明確になります。さらに、そのキャラクターは「応援したくなる」魅力的な存在へと昇華されるでしょう。これによって、自身の物語にワクワク感を加え、完成度を高めることができるのです。テーマとキャラクター。ここまで描けたら、自分を物語化するための設計プロセスは完了です。これらの振り返りは一人で行っても良いですが、心許せる友人と気軽に語り合いながらフィードバックをもらい、新たな気づきを得る方法も非常に有効です。もちろん、私のような個人コンサルタントに相談するのも一つの選択肢です(笑)。私は自身の個人コンサルティングを「働く女性の家庭教師」、略して「かてきょ」と呼んでいます。コンサルティングとは言え、そのスタイルは非常にカジュアルです。非日常的で洗練されたホテルのカフェで、お茶を飲みながらトーク番組のように楽しいおしゃべりをします。クライアントの「これまで」の歩みを自然に引き出し、それらの点を結びつけ、意味のある物語へと昇華させるお手伝いをしています。(※1)Rachel E White, Emily O Prager, Catherine Schaefer, Ethan Kross, Angela L Duckworth, Stephanie M Carlson/The “Batman Effect”: Improving Perseverance in Young Children Free/2016年12月16日『Child Development.』(※2)21st Century Fox, the Geena Davis Institute, J. Walter Thompson/The Scully Effect: I Want to Believe in STEM/2018年
著者紹介:タブタカヒロ氏のキャリアと「自分物語」
『モヤモヤが晴れる最強の魔法「自分ものがたり」で人生が変わる』の著者であるタブタカヒロ氏は、小学館から本書を1760円(税込)で刊行しています。タブタカヒロ氏はビジネスコンサルタントであり、「働く女性の家庭教師」としても活動しています。約20年のコンサルティング歴を持ち、外資系アパレル企業を経て外資系コンサルティングファームに転身。現在は大手総合コンサルティングファームで、クライアント企業の課題解決に尽力しています。週末には、コンサルティングとほぼ同時期に始めた「働く女性の家庭教師(通称:かてきょ)」として、個人のキャリア支援を行っています。その他にも、セミナー開催、大学での講義、コラム執筆などを通じて、専門用語を使わずに「おしゃべり」感覚で人々の想いを引き出し、その人らしいキャリアの方向性を「自分物語」として描き直すサポートを続けています。著書には『\かてきょ式/わくわく思考せんりゃく。』(すばる舎)があります。また、『外資系コンサルはなぜ、あえて「手書きノート」を使うのか?』(著:太田あや・KADOKAWA)では取材協力を務めました。彼自身の「自分物語」もすでに50巻を数え、「次の章」を更新し続けています。