北海道を駆け抜ける「ノロッコ号」の魅力と終焉:鉄道写真家が語る郷愁の旅路




時代を超えて愛されたノロッコ号、その旅情が今、新たな章へ
私の鉄道旅の原点:過ぎ去りし日々の列車旅
私の鉄道に対する情熱は、幼い頃の汽車旅に端を発しています。かつては青春18きっぷや周遊券を片手に、全国各地を列車で巡るのが最大の楽しみでした。当時はまだ夜行列車や客車列車が多数運行されており、その旅情は格別なものでした。そんな古き良き鉄道旅の面影を現代に伝える存在が、JR北海道の「ノロッコ号」でした。しかし、この愛すべき列車が2026年度でその運行に幕を閉じると聞き、深い感慨を覚えています。
「ノロッコ号」が織りなす独自の旅情と魅力
「ノロッコ号」は、通常の客車を開放的な造りに改良し、機関車が牽引する特別な列車です。特急列車のような高速走行や都会の電車のようなスムーズさはありません。昔ながらにゆっくりと動き出し、「ガタンガタン」という揺れとともに進むその姿は、多くの人々に郷愁を抱かせます。富良野や釧路といった美しい観光地を巡るだけでなく、その独特の走行音や乗り心地そのものが、旅の醍醐味として人気を集めてきました。
窓から広がる雄大な景色と心地よい風
大きく開け放たれた窓からは、沿線の壮大な景色を心ゆくまで堪能できます。ゆっくりと流れる美しい森の緑は、私のお気に入りの風景の一つです。そこから吹き込む風を全身で受け止める心地よさは、何物にも代えがたい至福の瞬間でした。
「静と動」のコントラストが心を惹きつけるノロッコ号
「ノロッコ号」の大きな魅力は、その「静と動」の明確な対比にあります。走行中は風と盛大な走行音が響き渡りますが、この列車にはエンジンもモーターも、そしてエアコンもありません。そのため、駅に停車すると、それまでの賑やかな走行音はピタリと止み、乗客の話し声や車内アナウンスだけが響く静寂が訪れます。そして遠くから汽笛が聞こえ、軽い衝撃とともに再びゆっくりと動き出すのです。
旅の終わりと新しい始まり
私はこの「静と動」の移り変わりを味わうため、何度も「ノロッコ号」に乗車しました。風を感じ、揺れに身を委ね、あの独特の静けさに浸るひととき。そして、写真家の性として、つい沿線のロケ地を探してしまうのでした。今後導入されるJR北海道の新しい観光列車「赤い星」「青い星」はエンジン付きの気動車となるため、旅そのものは続きますが、あの「ノロッコ号」ならではの静寂を体験できないことに、一抹の寂しさを感じています。さようなら、「ノロッコ号」。