季節の変わり目を健やかに過ごすための漢方養生法

今年の夏は例年にない猛暑が続き、体調を崩しやすい方が多いのではないでしょうか。特に薬を服用するほどではないものの、気分が優れないと感じる方も少なくありません。このような不調に対して、79歳にしてなお精力的に活動されている漢方家の根本幸夫氏が、季節に応じた身体のケア方法を提案しています。氏は、季節の移り変わりによって身体が影響を受けることを理解し、薬膳、ツボ、そして日々の生活習慣を通じてバランスを整えることの重要性を説いています。根本氏の著書『79歳、現役漢方家の季節の養生12か月』は、この考えに基づき、100年時代を健康に生き抜くための知恵が詰まった一冊です。特に今回は、季節の変わり目である9月に重点を置き、呼吸器系の健康維持に役立つ具体的な方法と、この時期に特におすすめの食材についてご紹介します。
9月の変わりやすい気候は、身体に大きな負担をかけます。蒸し暑い日から急な冷え込みへと変化する寒暖差は、自律神経の乱れを引き起こし、体調を崩す原因となりがちです。特に、肺の裏側、肩甲骨周辺が冷えると鼻詰まりなどの呼吸器症状が出やすくなるため、朝の羽織ものなどで背中の保温を心がけることが大切です。また、この時期は台風や秋雨前線の影響で湿度が高く、低気圧が喘息の発作を誘発することもあります。喘息発作時には、横にならず上半身を起こすことで横隔膜への圧迫を軽減し、呼吸を楽にする体勢を取るようにしましょう。
秋の食養生においては、肺や喉などの呼吸器を強化する食材を積極的に取り入れることが肝要です。例えば、ネギの白い部分は「葱白」として知られ、発汗、健胃、去痰の効能があります。ユリ根は肺を潤し咳を鎮める作用があり、「百合湯」という漢方薬にも用いられ、精神安定にも効果的とされます。ギンナンも古くから咳止めや喘息予防に効果があるとされ、「定喘湯」に配合されていますが、消化不良を避けるため加熱して1日10個以内を目安に摂取しましょう。旬の梨は、体の熱を冷まし潤いを与える効果があり、空咳や喉の炎症緩和に役立ちます。梨とシソを組み合わせたジュースは、喉の不調や痰、声枯れに良いとされています。慢性的な咳には、ユリ根とギンナンを煮込んだスープが推奨されます。逆に、刺激物やアクの強い食べ物、消化しにくいもち米製品などは呼吸器症状を悪化させる可能性があるため、避けるべきです。食欲が高まる時期でも、腹八分目を心がけることが、呼吸器系への負担を減らし、発作の予防にも繋がります。
私たちの身体は、季節の移ろいとともに変化する自然の一部です。猛暑が続く現代において、身体の声に耳を傾け、適切な養生を行うことで、心身のバランスを保ち、健康で充実した日々を送ることができます。日々の生活の中で、漢方の知恵を取り入れ、自然治癒力を高めることは、予測不能な現代を力強く生き抜くための大切な実践です。