樋口毅宏と山崎洋一郎、カルチャーを語る:新著記念対談後編




作家・樋口毅宏氏が新刊『なぜ本を読むのか、なぜ映画を観るのか、なぜ音楽を聴くのか──100年後、カルチャーの参考資料になる本』を上梓し、その記念として、彼が敬愛するロッキング・オン社代表で音楽評論家の山崎洋一郎氏との対談が実現しました。この対談の後編では、樋口氏が自身の新著について語るだけでなく、特に音楽評論家であり編集者でもあった故・渋谷陽一氏への深い敬意と情熱を熱く語る場面が展開されました。
樋口氏は、Web LEONの人気連載「手玉にとられたい!」でも知られる存在であり、今回の新著は、彼が55歳という人生経験の中で培ってきた、音楽、映画、そして文学への深い愛情が凝縮された一冊です。そのタイトルが示す通り、100年後の未来においても、カルチャーを理解するための貴重な資料となることを目指しています。この対談は、同世代の読者だけでなく、若い世代にもぜひ読んでもらいたい内容となっています。特に後編では、樋口氏が自身の本の宣伝をも忘れ、渋谷陽一氏について熱弁を振るい、山崎氏もその情熱に感銘を受ける様子が描かれています。
山崎氏は、樋口氏の著作を「かなり読んでいる」と語り、その理由として「読んでいないと、会った時にどういう攻撃されるか、わかんないですから(笑)」と冗談めかして述べました。樋口氏の執筆スタイルについて問われると、山崎氏は「小説を書く人は自分の文体に神経質で、細心の注意を払っているため、時に自意識が強すぎることがあり、自分の文章にうっとりしているように感じることがある」としながらも、樋口氏の場合には「そのうっとり感がまったくなく、文章自体が好きです」と評価しました。山崎氏によれば、樋口氏は「ものを伝えるために文章を書く」という割り切りがあり、文学的なナルシシズムがない点が特徴であるとのこと。元雑誌編集者としての経験が、彼を「自分が気持ち良くなるために文章を紡ぐ人とは違う」存在にしていると分析しています。むしろ、伝えるべき明確なメッセージがあり、それを表現するための道具として言葉を使っているという点で、彼の文章は特異であると言えるでしょう。
この対談を通じて、樋口毅宏氏の文学への真摯な姿勢と、彼が文化全般に対して抱く熱い思いが浮き彫りになりました。特に故・渋谷陽一氏への尊敬の念は深く、彼の思想や影響が樋口氏の創作活動に大きな影響を与えていることが伺えます。山崎洋一郎氏との率直なやり取りは、読者に文化の奥深さと、それを探求する書き手の情熱を伝える貴重な機会となりました。