この世界に存在するあらゆるものは時間の制約を受け、多くの出来事はその長さに応じて深い印象を刻みます。この連載の第三弾では、美しさと精緻さを追求した6つの傑作時計と、それぞれにまつわる時間の物語を紐解きます。これらの時計は、単に時を告げる道具としてだけでなく、人生の貴重な瞬間に華麗な輝きを添える存在となるでしょう。
ナポレオンの勝利を刻むヴァンドーム広場の夜景
1805年12月2日、アウステルリッツの戦いにおいて、ナポレオン率いるフランス軍はロシア・オーストリア連合軍を圧倒し、ヨーロッパ大陸の覇権を確立しました。この戦いは午前8時に始まり、約9時間後の日没とともに終結したと伝えられています。戦いの1年前、ナポレオンは皇帝の座に就き、その戴冠式で用いられた宝剣を製作したのは、後にショーメの創業者となるマリ=エティエンヌ・ニトでした。これ以降、ショーメは皇帝御用達のジュエラーとなります。アウステルリッツの戦いの勝利を記念して建てられた円柱の頂上からナポレオン像が街を見下ろすヴァンドーム広場は、1812年から本店を構えるショーメにとって聖地とされています。今回のモデルは、しっとりとした月明かりに照らされたこの広場の情景を、高度なエナメル技術を駆使して文字盤に美しく再現しています。この「アンフィニマン 12 レヴリ ノクターン」は、ホワイトゴールドとダイヤモンドを贅沢に使用し、自動巻きムーブメントを搭載したアリゲーターストラップの時計で、参考価格は16,720,000円です。
この傑作は、ギヨシェ彫りを施した半透明のエナメルや細密画など、4つのグランフーエナメル技法を駆使して、ヴァンドーム広場の情景を驚くほど精緻に描き出しています。特に、最初の本店があった15番地から現在の12番地にある本店を見た広場の様子が再現されており、その技術はエナメルの名手アニタ・ポルシェによるものです。ホワイトゴールドで手彫りされた街灯には、ダイヤモンドが配され、その煌めきが光を表現しています。この時計は、単に時を刻むだけでなく、歴史的な瞬間と芸術的な技巧が融合した、まさに着用できる芸術品と言えるでしょう。ショーメは、この時計を通じて、ヴァンドーム広場の夜の魅力を永遠に留め、身につける人にその歴史と美しさを伝えています。
無限の円周率にインスパイアされたルイ・ヴィトンの時表示
円周率は現在、314兆桁まで計算され、その総計算時間は「9274878.580秒」という膨大な数字に上ります。しかし、その先には無限に続く未知の数字が広がり、多くの謎が残されています。古くから最も美しい図形とされ、無限小数を内包し、無限の対称性を持つ円にインスパイアされ、ルイ・ヴィトンはこの円を二重に重ねて独創的な時刻表示に採用しました。ケース内部で回転する2枚のディスクには目盛りが刻まれ、外側のディスクが「時」を、内側のディスクが「分」を示します。ケース前面上部に配置された扇状の二層の窓に現れる数字と目盛りを、その間にセットされた菱形のマーカーで読み取ることで、現在の時刻を知る仕組みです。表示窓の下では、スノーセッティングで敷き詰められたダイヤモンドが、見る者を魅了する輝きを放っています。
この「タンブール オトマティックコンバージェンス プラチナダイヤモンド」は、37mmのプラチナケースにダイヤモンドをあしらい、自動巻きムーブメントとカーフストラップを組み合わせています。価格は11,220,000円です。時刻表示窓の形状は、ルイ・ヴィトン家の邸宅のインテリアから着想を得ており、その繊細なデザインが特徴です。ダイヤモンドが煌めくケースの前面と、柔らかな曲線を描くケースのフォルムが織りなす美しさは、この時計にエレガントな印象を与えています。薄型の自社製自動巻き機械式ムーブメントを搭載し、ケース厚も8mmと薄く、そのドレッシーな雰囲気を一層際立たせています。ルイ・ヴィトンは、円周率の無限の神秘と円の完璧な美しさを時計のデザインに昇華させ、機能性と芸術性を兼ね備えた唯一無二の作品を創造しました。