あるフードライターが綴る日々の食の記録には、素朴ながらも心に残るミャンマー料理への深い愛情が垣間見えます。見た目の華やかさよりも味の本質を追求し、日本に増え続ける本格的なミャンマー料理店を訪れる中で、その飾らない魅力を再発見しています。彼の食に対する真摯な姿勢は、朝食の質素な納豆ご飯から始まり、昼食の手作り野菜ビーフン、そして仕事で巡り合う様々な料理へと続いていきます。各地での食の体験は、単なる食事を超え、文化や人との出会いを豊かにする旅となるのです。
異文化の味覚探求:ミャンマー料理の魅力
食のプロである「おとなの週末」のライター、渡辺高氏は、取材で忙しい日々を送る中で、特にミャンマー料理に心を奪われています。彼は、華やかさや写真映えを気にしない、地味ながらも深い味わいを持つミャンマー料理の店が、巣鴨、大塚、駒込といった地域で急速に増えていることに注目しています。これらの店は、現地のミャンマー人客で賑わい、日本人の好みに媚びない“ストロングスタイル”を貫いています。渡辺氏が訪れた大塚の「テッテッユァ2」では、具材は異なっても見た目がほぼ同じ定食が提供され、その変わらない姿勢に愛着を感じています。また、別の店「ヤンゴン炒飯」で味わったタミンジョー(ミャンマー風チャーハン)やダンパウ(炊き込みご飯)も、その素朴な見た目とは裏腹に、心温まる美味しさで彼を魅了しています。
渡辺氏は、ミャンマー料理の魅力について、「映えない」けれども「いじらしい」と表現し、その飾らない本物の味に深い魅力を感じています。例えば、「テッテッユァ2」で提供される豚肉料理は、見た目こそシンプルですが、一口食べればその奥深い風味に驚かされます。ライスはたっぷりで、添えられたリンゴジュースが全体の味を引き締めます。彼が訪れる店々は、日本にいながらにして現地の文化を感じさせる、そんな体験を提供してくれます。ミャンマー料理の研究は彼のライフワークとなり、それぞれの料理が持つ背景や、それを生み出す人々の情熱に触れることで、食の探求はより一層深まっていきます。地味ながらも心に響く味わいは、彼の食に対する姿勢を象徴しているかのようです。
日常に潜む美食の発見と心の癒し
渡辺高氏の日常は、ミャンマー料理の探求だけでなく、様々な食の発見に満ちています。ある日、彼は長野と新潟のローカルファミレス「あっぷるぐりむ」でスープナポリタンとライスコロッケのリゾットを体験し、その意外な組み合わせに静かな面白さを見出します。また、宮城県で開催された「ARABAKI ROCK FEST.26」では、娘と共に参加し、地元の「セリ汁」のシャキシャキとした食感とほろ苦さに感動。フェスの音楽と共に、地域の食文化を満喫します。彼の食の記録には、居酒屋でついつい頼んでしまうという「ニラ玉」への愛着も記されています。原価は低いが、店ごとに個性が光るニラ玉は、彼にとって酒の肴として最高の存在であり、写真ライブラリーには異なる店のニラ玉が3つも収められているほどです。
さらに、渡辺氏の食の冒険は、故郷からの恵みにも及びます。茨城県大洗町からのふるさと納税の返礼品である大きなハマグリは、彼にとって「世界で最もおいしいモノのひとつ」であり、サンマや椎茸と並んで特別な存在です。豪快に鍋で調理されたハマグリは、3つで十分満腹になるほどの満足感を与えます。宮崎県都城市では、写真家・松村隆史氏と共に夜の街を徘徊し、おでんの「雨風」や、お茶漬けの「しぐれ茶屋」を訪れます。特に「雨風」では、季節外れながらも炭火焼きの串や自家製カツオツナサラダを堪能し、スポーツ好きの店主との会話を楽しみます。「しぐれ茶屋」では、大きく深いお椀いっぱいのあさり汁に癒され、53年続く老夫婦が営む店のおもてなしに心温まります。これらの体験は、彼にとって単なる食事ではなく、人との出会いや心の安らぎをもたらす貴重な時間なのです。