隠れ家蕎麦店「ら すとらあだ」の魅力:小宮山雄飛が誘う至福の蕎麦呑み体験








今回は、蕎麦と日本酒をこよなく愛する小宮山雄飛氏が推薦する「蕎麦呑み」特集の第20回として、中野坂上にある知る人ぞ知る名店「ら すとらあだ」への訪問記をお届けします。この店は、一見するとごく普通の民家と見間違うほどの外観で、看板も暖簾もありません。しかし、その隠れた佇まいとは裏腹に、多くの蕎麦好きが足繁く通う予約困難な人気店として知られています。お店の扉を開けると、そこには家庭的な温もりを感じさせる空間が広がり、訪れる客は靴を脱いで上がります。このような独特の雰囲気の中で、提供されるお任せコース料理と厳選された美酒が、至福のひとときを演出します。
「ら すとらあだ」では、メニューが存在せず、全てお任せのコース料理(14,000円から)のみが提供されます。取材のため、今回はコース料理の中から厳選された品々が紹介されました。最初に運ばれてきたのは、可愛らしい器に盛られた、丁寧に削られた鰹節からとった出汁。余計な味付けは一切なく、鰹節本来の深い旨みがじんわりと胃の腑に染み渡ります。これは、これから供される料理への期待を高め、味覚と消化器を目覚めさせる「蕎麦前の前」とも呼べる一品です。
次に登場したのは、季節の野菜を薄削りの出汁で炊き上げた煮物です。カリフラワー、ごぼう、アスパラガス、カブ、ニンジンなど、彩り豊かな野菜が細かく丁寧に調理されており、それぞれの素材が持つ風味と出汁の優しい味わいが絶妙に調和します。野菜の配置にも美意識が感じられ、ゆっくりと味わうことで心が癒されます。この店では、店主が自ら厳選した日本酒が豊富に取り揃えられており、どれを選ぶか迷った際には、店主に相談するのが最良の方法です。この日は、美しいラベルに惹かれて「仙禽 線香花火」という日本酒を注文。多種多様な片口やお猪口の中からお好みのものを選べるのも、酒好きにはたまらない魅力です。フルーティーでキレのあるこの日本酒は、繊細な料理との相性も抜群でした。
さらに、自家製XO醤と牛テールの煮込みがそばがきと共に提供されました。この牛テールは、有名な滋賀県の精肉店「サカエヤ」のものを半日かけて丁寧に煮込み、ほぐしてゼラチンで固めた逸品です。これ単体でも素晴らしい酒の肴となりますが、作りたてのそばがきに添えて味わうことで、その美味しさは一層際立ちます。XO醤の豊かな風味と牛テールのコクが、そばがきの素朴な味わいと見事に融合し、口の中で至福のハーモニーを奏でます。このような独創的な料理の数々が、訪れる客を飽きさせません。
「ら すとらあだ」は、その隠れた立地と、お任せコースというスタイルを通じて、訪れる人々に非日常的な食体験を提供します。出汁から始まり、季節の野菜、厳選された日本酒、そして独創的なそばがきと料理の組み合わせは、まさに美食の探求と言えるでしょう。店主のこだわりが随所に感じられるこの店は、蕎麦と酒を愛する人々にとって、忘れられない特別な場所となることでしょう。