前回の内容に続き、「脂質異常症」が今回の主題です。血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪が増加し、善玉コレステロールが減少するこの病気は、心筋梗塞や脳梗塞といった重大な疾患に繋がる可能性があります。食いしん坊倶楽部のメンバーであり医師の三浦雅臣先生に、今日から始められる予防策や改善策についてお話を伺いました。
脂質異常症への対策として、食生活の改善が非常に重要です。特に油分の摂取方法が鍵となります。過剰な揚げ物やジャンクフードの摂取は、血液中のLDLコレステロールや中性脂肪を増加させる主要な原因となります。しかし、全ての油分が悪いわけではありません。DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)のような不飽和脂肪酸は、中性脂肪を減少させる効果があり、実際に脂質異常症の治療薬としても利用されています。これらの成分は、アジ、イワシ、サバなどの青魚に豊富に含まれているため、積極的に食事に取り入れるべきです。摂取効率を最大化するには刺身が理想的ですが、アジフライのような調理法の場合は、衣による余分な脂質や糖質の摂取を考慮し、量を調整したり、翌日の食事でバランスを取ることが賢明です。ただし、不飽和脂肪酸は酸化しやすい性質があるため、抗酸化作用のあるファイトケミカルが豊富な野菜と一緒に摂取することで、その効果をより安全に享受できます。かつては卵のコレステロール含有量から摂取制限が推奨されていましたが、現在では適度な摂取が良質なタンパク源としてメリットをもたらすとされています。過度な制限ではなく、バランスの取れた取り入れ方が大切です。
中性脂肪の管理には、脂質だけでなく糖質の摂取量にも注意が必要です。過剰な糖質は体内で中性脂肪に変換され蓄積されます。ご飯や麺類だけでなく、見過ごされがちな甘い飲み物、例えば果汁飲料、スポーツドリンク、砂糖入りのコーヒーや紅茶なども、糖質の過剰摂取に繋がり得ます。アルコールの摂取量も重要で、脂質異常症の診断を受けている場合は、控えめにするべきでしょう。特に中性脂肪が高いタイプの方は、より一層の注意が必要です。遅い時間の食事も避けるべき習慣の一つです。体内時計のリズムにより、夜遅い時間は脂肪を蓄積しやすい時間帯であり、脂質の吸収率も高まります。また、コレステロールの体内合成は夜間に行われることが多いため、その前にコレステロールの材料を摂取することは避けた方が良いでしょう。もし遅い時間に食事をする必要がある場合は、野菜や魚を中心とした軽めの食事が推奨されます。
遺伝的な要因も脂質異常症に大きく関与しており、家族に脂質異常症の人がいる場合は、自身もその体質を受け継いでいる可能性があります。しかし、このような場合でも、前述の食生活の対策は有効です。「遺伝はトランプの最初の手札のようなもの」という言葉があるように、初期の状況が不利であっても、その後の戦い方次第で結果は大きく変わります。自身の体質を理解し、適切な生活習慣を心がけることが大切です。
食生活の改善だけでなく、適度な運動も脂質異常症の改善には不可欠です。運動不足は善玉コレステロールの低下を招きますが、定期的な運動は中性脂肪を分解する酵素の働きを促進し、善玉コレステロールを増加させます。運動は善玉コレステロールの量だけでなく、抗炎症作用や余分なコレステロールの回収機能も向上させると考えられています。しかし、毎日運動を続け、食事にも気を配ることは容易ではありません。脂質を過度に制限しすぎるとストレスになることもあります。例えば、フライドポテトの代わりに野菜の小鉢を選ぶ、外食が続いた週は翌週に控えめにするなど、小さな工夫を積み重ねることが重要です。美味しい食事を楽しみつつ、時には軌道修正を行う。このような柔軟な姿勢で続けることが、脂質管理を継続させる秘訣となるでしょう。