スパイス香る料理と酒を楽しむ駒沢大学の隠れ家「カリー座」

東京・駒沢大学に佇む『カレーハウス カリー座』は、ただのカレー店ではありません。ここは、スパイスの魔法が息づく居酒屋として、訪れる人々を魅了しています。店主の山崎亮氏が紡ぎ出す料理は、伝統的な居酒屋メニューに斬新なスパイスの香りを纏わせ、食べるたびに新たな発見と感動を提供します。この記事では、カリー座がどのようにして唯一無二の存在となり、食通たちの間で話題を呼んでいるのかを深く掘り下げていきます。
元々アパレル業界に身を置いていた山崎氏は、ある日突然「架空のカレー屋」を妄想し始めます。それは単なるカレーへの憧れではなく、スパイスという素材そのものへの深い探求心から来るものでした。彼は10種類もの粉末スパイスを常に持ち歩き、様々な飲食店で料理に振りかけたり、醤油に溶かしたりして、味の変化を徹底的に研究しました。この地道な研究が、彼の料理哲学の基礎を築き上げます。
その後、大衆酒場でのアルバイト経験を通じて、山崎氏は料理と店舗運営のノウハウを習得。特に無水チキンカレーの美味しさに感銘を受け、コロナ禍において三軒茶屋で「妄想カレー店」を現実のものとします。しかし、彼の真の夢は居酒屋を開くこと。その夢を叶えるべく、4年前に駒沢大学へと移転し、現在の『カレーハウス カリー座』が誕生しました。
山崎氏のスパイス使いは実に巧妙です。「クミンとカルダモンはキャッチーなスパイス」と語る彼は、エキゾチックな風味を際立たせるか、あるいは和食の繊細さを保ちつつスパイスを奥深く響かせるかによって、その配合を微調整します。例えば、インドの漬物であるアチャールを串焼きにした「アチャール串」は、その独創性の象徴です。ラムつくねにはクミンと青唐辛子、ミントが絶妙なバランスで香り立ち、うずらにはシナモンが食欲を刺激します。これらの串焼きは、一口食べるごとに異なるスパイスの物語を語りかけ、客の舌を飽きさせません。
カリー座で使用されるスパイスは、基本的にすべて丸のままのホールスパイスで仕入れられ、店舗で一つ一つ丁寧にパウダー化されます。ブレンドは行わず、調理の際にその都度ミックスすることで、それぞれのスパイスが持つ本来の風味を最大限に引き出すのです。このこだわりを支えるのが、タイ料理店から受け継いだ巨大な乳鉢。歴史ある道具を大切に使いこなすことで、山崎氏のスパイスへの情熱と技術が具現化されています。
『カレーハウス カリー座』は、スパイス料理の奥深さと居酒屋の楽しさを両立させた稀有な存在です。店主の山崎亮氏の独創的な発想と徹底したこだわりが、訪れる人々に忘れられない食体験を提供しています。