都内で涼を呼ぶ和スイーツ、老舗から創作まで

夏の気配が深まり、耳に心地よい虫の声が響く今日この頃。この季節に無性に恋しくなるのが、つるりとしたのど越しと、ひんやりとした口当たりが魅力の和の甘味です。今回は、都内で味わえる涼やかな和スイーツの名店を厳選し、その魅力をご紹介します。長年愛されてきた老舗の逸品から、新感覚の創作和菓子まで、心ゆくまで涼を感じるひとときをお届けします。
奥沢に佇む『Cafe Irodori』は、四季折々の情景を表現する創作和菓子で知られています。店主のまきのあやさんが手掛ける和菓子は、伝統を大切にしつつも、洋酒やフルーツといった新しい要素を取り入れることで、独自の進化を遂げています。特に注目したいのは、ドライジンを使用した水羊羹。口に含んだ瞬間、ジュニパーベリーの爽やかな香りが広がり、「これが大人の味わいか」と感嘆の声が漏れることでしょう。さらりとした甘さと、とろけるような口どけは、夏の午後に格別の涼をもたらしてくれます。
まきのさんの創造性は、水羊羹に留まりません。カカオの芳醇な香りとほろ苦さを閉じ込めた「カカオニブの寒天」は、あえて寒天を切らずに提供することで、ふるふるの食感を最大限に引き出しています。また、季節ごとに表情を変える紫陽花モチーフの練り切り「色づく」は、日本の移ろいゆく季節の美しさを菓子に映し出すという、まきのさんの深い想いが込められた一品です。営業は金・土・日のみという希少性も、その魅力を一層高めています。
人形町に位置する『the et soie(テ エ ソワ)』では、日本茶の奥深さと手作りの甘味が織りなす静謐な空間が広がっています。着物が似合う店主の米沢美智子さんは、厳選した日本茶の風味を最大限に引き出すため、心を込めて甘味を手作りしています。グラスに美しく盛り付けられた善哉や、洗練されたパフェは、現代的ながらも、細やかな手仕事と手間暇を惜しまない米沢さんのこだわりが宿っています。特に、職人が丁寧に焼き上げた菊の形をした最中は、サクサクとした食感と愛らしい見た目で訪れる人々を魅了します。
素材選びにも米沢さんのこだわりが光ります。白砂糖を避け、和三盆や沖縄のきび砂糖を使用することで、角のない優しい甘さを実現しています。あんみつや白玉に添えられたきび砂糖のシロップは、軽やかで上品な甘さ。柔らかな味わいの日本茶との相性も抜群です。米沢さんは、「最初の一煎は、心を込めて淹れさせていただきます」と語り、その後は客が自由に茶を楽しめるよう、ポットを提供するなど、リラックスした雰囲気作りにも心を配っています。ここでは、心地よい静寂の中で、涼やかなお茶と甘味の時間を堪能できます。
この記事では、都内で味わえる個性豊かな和スイーツを提供する二つのカフェに焦点を当てました。伝統の枠を超え、新たな可能性を探求する奥沢の『Cafe Irodori』、そして日本茶と甘味を通じて和の心を伝える人形町の『the et soie』。どちらの店も、店主の情熱と繊細な感性が光る逸品ばかりです。この夏、心と体を癒す涼やかな和スイーツを求めて、これらの名店を訪れてみてはいかがでしょうか。